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 高精度の微細加工技術を得意とする入曽精密(埼玉県入間市)がDMG森精機と手を組み、5軸加工の暗黙知のデータ化に挑んでいる。

 まずは特定の100種類の形状について、熟練者が理想的と考える手順で5軸加工するための加工プログラムを提供する。人手に頼る作業については手順書をデジタル化し、工具の取り違えなどの人的ミスを検出できるシステムを用意。2021年末をめどに販売を始める。将来的には任意形状のワークに対して、自動で最適な加工プログラムを生成するシステムを構築する計画だ。

 5軸加工機は複雑な形状でもワンチャックで加工できるなどの利点から、欧州などで普及が進む(図1)。一方、日本では依然として3軸加工機が主流とされる。人手不足に悩む現場では5軸加工機の利用が省人化を進める有効な手段の1つだが、高価で扱いが難しいとして欧州などに比べると普及が遅れている。

図1 5軸加工を自動化するプログラムを使って製作した部品
図1 5軸加工を自動化するプログラムを使って製作した部品
(出所:日経ものづくり)
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 そこで、入曽精密はDMG森精機などと協力し、初心者でも5軸加工機を扱えるよう、加工ノウハウを提示する書籍やWebサイト、具体的な加工プログラムとデジタル手順書などから成る「5軸加工ナビ」というシステムを立ち上げた。

 5軸加工では完成品に至るまでの加工方法が何通りもある。まずは12種類のワークについて、入曽精密代表取締役の斎藤清和氏が理想的だと考える加工手順を「5軸加工ナビ」という書籍にまとめ、21年10月末に発売した。併せてWebサイトの「5軸加工ナビ」上で加工の様子を動画で確認できるようにした。教科書のように使ってもらい、日本の5軸加工技術を底上げするのが狙いだ。

 21年末からは、前述の12種類を含む100種類のワークについて、斎藤氏が理想とする工程で加工するプログラムを段階的に販売する。DMG森精機の5軸加工機「DMU 50」での加工を想定した加工プログラム集で、具体的にどのように加工するのかが学べ、それをアレンジすれば実加工にも利用できる。22年には加工できるワークの種類を200種類以上に増やす。さらに24年以降には、人工知能(AI)を活用して任意の形状のワークに対して最適な加工を提案できるようにする計画だ。

 入曽精密が競争力の源泉となりそうな5軸加工のノウハウを商品化して公開するのには、事業拡大という狙いがある。同社はこれまで、大きさ0.1mmのサイコロなどさまざまな微細加工に挑戦してきたが、斎藤氏らの個人の手腕に頼るため製作数に限界があった。そこで、ノウハウを商品化して5軸加工の裾野を広げつつ、難度の高い加工で事業を広げていこうとしているのだ。

 同社の研究開発部隊である微細切削加工研究所(埼玉県入間市)の内田研一氏は「加工の自動化を進めても自動運転と同じく、全てを自動化するのは難しい。難度の高いものは入曽精密の技術者が請け負いたい」と語る。

 一方、DMG森精機には、強みとする5軸加工機を日本市場でさらに拡販するとともに、難しいとされる加工のハードルを下げてユーザーの利便性を高める狙いがある。