日本電産が半導体を内製する検討に入った(図1)。同社は2022年1月26日、ルネサスエレクトロニクス出身でソニーグループ幹部だった大村隆司氏をスカウトし、同年2月1日付で日本電産の副最高技術責任者・半導体開発担当にする役員人事を発表した。
同氏を「責任者に据えて陣頭指揮を執ってもらい、車載向け半導体の今後について戦略を練る計画」(同社)だ。得意とするM&A(合併・買収)で半導体メーカーを買収するか、外部から技術を取り入れて自ら半導体を開発・生産するかを中心に検討するとみられる。ついに、製品の「川上から川下まで自社で造るためのラストパーツ」(同社)という半導体の内製までを視野に入れたことになる。
半導体内製化の検討に入ったきっかけは、足元の半導体不足だ。売り上げ機会の喪失と原材料の高騰の影響を受け、同社の車載製品事業の22年3月期(2021年度)第3四半期(2021年4~12月)までの業績は伸び悩んでいる。売上高は3011億円と前年同期比で17.6%伸びたものの、営業利益率は3.6%と前年同期の4.7%よりも1.1ポイント低下した。
半導体の内製化を検討する第1の狙いは、日本電産が現在、最も力を入れている電気自動車(EV)用駆動モジュール(電動アクスル)「E-Axle」の販売における、半導体不足の影響回避にある。同社製電動アクスルを搭載したEVの販売台数は累計で26万5000台を超えており、直近の2021年11月と12月は共に2万台を突破している(図2)*。好調な受注を背景に、日本電産は2025年度を見据えて約3000億円を投入して、電動アクスルの生産能力を約700万台まで引き上げる計画だ。
半導体を外部調達に依存し続けると、電動アクスル事業の成長にブレーキがかかる恐れがあるだけでなく、「25年度に全社売上高4兆円」という目標達成の足かせとなりかねない。この危機感が日本電産の永守重信会長の目を半導体の内製化に向けさせたとみられる。だが、前述の通り、同社にとって内製化は珍しくはない。日本電産はこれまで多くの部品や製品を内製に切り替えてきた実績があるからだ。