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 三菱電機は、3Dデータや人工知能(AI)を活用した「ティーチングレスロボットシステム技術」を開発した。同社のAI技術「Maisart(マイサート)」の音声認識AIを利用し、ユーザーがタブレット端末から声で作業指示を伝えると、多関節ロボットの動作プログラムを自動生成できる(図1)。「音声による作業指示は産業用ロボットメーカーとしては初」(同社)という。アームの軌跡を自動で最適化する機能なども備えており、専門知識がなくても動作プログラムを作成できる。

図1 弁当箱に具材を詰める作業の例
図1 弁当箱に具材を詰める作業の例
作業対象を操作画面から選択した後、「弁当箱の第一区画にから揚げを3個詰めて」と声で指示すると、画面の中に作業時の軌跡(図中、オレンジ色の弧)がAR(拡張現実)表示される。「キャベツの右」といった相対位置の指定や「少し上」などの曖昧な指示にも対応できるという。声だけでなく操作画面のボタンからも指示できる。(出所:三菱電機)
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 生産ラインへの産業用ロボットの導入に当たっては、一般にロボットやプログラムに詳しい専門家による動作プログラムの作成(教示、ティーチング)が必要となる。実作業で最適な動作をさせるためには手間や時間がかかり、これが導入のハードルの1つとなっている。

 開発した技術を用いれば、現場で実作業に携わる人が簡単に動作プログラムを作成できる上、動作の自動最適化機能によって、多大な時間を要する動作の繰り返しテストや調整、実機による試運転などのプロセスを大幅に簡略化できるとしている(図2)。生成したプログラムの動きは、タブレット端末上で3Dモデルを使ったシミュレーションとして確認可能だ。

図2 作業の最適化
図2 作業の最適化
作業の始点と終点を設定すると複数の軌跡を算出し、つかむ対象物に応じて最も効率の良い軌跡を自動で選定して作業する。(出所:三菱電機)
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 3Dセンサーやビジョンセンサーの情報を基に把持対象物や周囲の状況を検知・認識し、動作を調整するのも特徴の1つ。センサー類は安価な一般的なものが利用できるという。周辺機器やセンサー類との連携を一元的に管理できるよう、IoT(Internet of Things)基盤「Edgecross」と連携するための統合管理システム「ROS-Edgecross連携機能」も開発した。

 具体的には、3Dセンサーで取得した画像や距離情報などを基に軽量3Dデータを生成し、ロボットの周囲にある番重や把持対象の商品などを操作画面上に再現したり、アームの軌道生成時の干渉判定に利用したりできる。