基準を満たすまで測定を繰り返し、基準値超過でも無報告─。日本製鉄の東日本製鉄所君津地区(千葉県君津市、以下、君津地区)で水質測定の不正が発覚した(図)。原因究明中に、排水成分について測定値よりも低い値を報告していたと判明。過去3~5年分の水質測定値を総点検した結果、有害物質であるシアンについて排水基準や協定値を超過した件数が53件もあった。不正が発覚に至るまでの経緯からみて、かなりずさんなケースと言わざるを得ない。
きっかけは、赤く染まった水(以下、着色水)の流出だった。2022年6月19日、君津地区の排水口(14番排水口)から着色水が構外に流れ出すトラブルが発生。翌20日には別の排水口(11番排水口)からも見つかった。
同月18日、コークス炉で発生したガスの洗浄で生じる脱硫液がタンクから漏洩しており、着色水はその脱硫液を含んでいた*1。着色水が流出した排水口付近で採取した水を同社が分析したところ、シアンと化学的酸素要求量(COD)、全窒素(T-N)、アンモニアの4成分について、水質汚濁防止法の排出基準値を超えていた*2。
さらに調査を進めると、着色水とは異なる排水系統の排水口(7番排水口)から排出基準値を超えるシアンとT-Nが検出された。高炉で発生したガスに含まれるダストなどを湿式処理した際に発生する処理水が流れ込んだのが原因とみられる。この処理水はシアンや窒素を含んでいるからだ。
こうした事態を受けて、同社は原因究明のために、関連する排水口の水質測定値の調査に着手。すると、さらに悪質な事実が発覚した。