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 民間企業による宇宙ビジネスへの参入が広がるなか、スタートアップ企業の活躍が注目されている。その1つが、水を推進剤にする小型衛星用の推進機(水エンジン)を開発する東京大学発のPale Blue(ペールブルー、千葉県柏市)だ。小型・長寿命で扱いやすい水エンジンは、小型衛星による通信や各種サービスへの貢献が期待されている(図1)。

図1 水を推進剤とするPale Blueの超小型統合推進システム
図1 水を推進剤とするPale Blueの超小型統合推進システム
(写真:Pale Blue)
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 Pale Blueが開発する水エンジンは、宇宙空間で小型衛星の移動や姿勢の制御、宇宙ステーションからの小型衛星の打ち上げなどに利用するもの。液体の水を気化させて水蒸気にして噴き出したり、水のプラズマを高速で噴き出したりして推進力を生み出す。水を推進剤として使うエンジンの地上実証では同社が世界トップレベルの実績を持つ。

 ロケットを打ち上げるような強力な推進力はないものの、宇宙空間で長期間にわたって効率良く動かせるのが特徴だ。推進剤の水が安定・安全・安価で使い勝手が良いという利点もある。同社は水蒸気式と水プラズマ式の2種類の推進機を組み合わせた世界初の統合推進システム(ハイブリッド式、KIR)を開発し、実証を進めている(図2)。

図2 統合推進システムの仕組み
図2 統合推進システムの仕組み
(出所:Pale Blue)
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 従来の推進機は高価なキセノン(Xe)ガスを高圧で貯蔵したり、ヒドラジンなどの有毒な化学物質を使ったりする必要があり、取り扱いが難しかった。これらの推進機と比べて水エンジンは燃費に優れ、持続可能な宇宙開発に役立つと期待される。