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アート思考のものづくり
アート思考のものづくり
著者●延岡健太郎/価格●1700円+税/発行●日経BP、日本経済新聞出版本部/判型●A5変形版 272ページ/ISBN978-4-532-32384-4
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 日本のものづくりはまだ世界を先導できる。鍵を握るのは「アート思考」だ─。本書はこう訴える。

 ここでいう「アート思考」は作り手の独り善がりを許すという考え方ではない。筆者は「主役は顧客だが、顧客の想定を超えた感動や喜びを与えるのがアート思考」だと説く。

 機能と性能を追究した結果、袋小路に迷い込んだ日本の製造業を批判する文脈でしばしば引き合いにされる英家電大手のダイソン(Dyson)などではなく、日本のマツダをモデルとしたのが本書のミソだ。後半は、日本の美意識と職人技、エンジニアリングの融合を目指したマツダの「魂動デザイン」について、約30人の関係者に取材して丁寧にまとめている。

 本書の主張を象徴するのはマツダが2012年の「アテンザ」から採用した独自開発の塗料のエピソードだ。アルミフレークを混ぜた塗料を新たに開発して、看板となる「ソウルレッド」の塗装を実現した。匠の技で出せる質感をテクノロジーの活用で実現。量産過程ではロボットによる自動化でコストダウンも図った。

 著者は低コスト化・効率化を図りながら、日本ならではのものづくりを世界へ発信せよと強く主張する。この主張に溜飲を下げる読者も多いのではないか。