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 横浜ゴムは従来の接着剤の常識を打ち破り、強度にも伸びにも優れる低温速硬化ポリウレタン系接着剤を開発した*8。狙いはマルチマテリアル化が進みつつある自動車で、炭素繊維強化樹脂(CFRP)などを使う軽量化ボディーへの展開だ。既にこれらの用途で実用化済みの接着剤と比べても、強度と伸びの両方で上回っており、現時点で世界最強になりつつあると自負している(図4)。

*8 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「革新的新構造材料等研究開発」プロジェクトのテーマの1つである「構造材料用接着技術の開発」に新構造材料技術研究組合(ISMA)の再委託先として参加して開発した。

図4 新しい接着剤の引っ張り試験
図4 新しい接着剤の引っ張り試験
(出所:横浜ゴム)
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強度も伸びも優れるウレタン化合物

 ウレタン化合物は、成分であるイソシアネート化合物とポリオールの選択により分子設計の自由度が高い。硬くて伸びないものから、柔らかくてよく伸びるものまで、多彩な性状の接着剤を作れる。スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴムといった他のゴム材料と比べても、大きな引っ張り強さや伸びを発揮する場合がある。

 我々はウレタン化合物のこうした優れた特徴をさらに伸ばし、[1]高い強度と大きな伸びが選択できる、 [2]多彩な性状・特性を創出できる、という2つの特徴を最大限に発揮する接着剤の開発を試みた。

 [1]の高い強度と大きな伸びを両立させるためには、イソシアネート化合物とポリオール化合物、ウレタン結合と架橋剤の割合と量を制御。これらから構成されるソフトセグメントとハードセグメントの相分離構造が理想的になるように工夫を凝らした。

 [2]の多彩な性状・特性の創出のためには、ソフトセグメントを構成し、伸びの部分を主に担うポリオールの性状も重要だ。さまざまな分子量や種類のポリオール化合物があるが、分子鎖の種類(化学構造)によっては、互いに引き合って結晶化したり、互いにやや反発したり自由に振る舞ったりする。

 これらウレタン結合の量、ポリオールの種類、分子量、組み合わせなどによって構成される相分離構造が、相乗的な効果を発揮するように設計して、強度と伸びを高い水準で両立させた新しい接着剤を実現できた。

 またこれらの効果により、ウレタン系接着剤の場合に時に問題となる、温度特性や耐久性といった課題に対しても、各原料の組み合わせや特性を最大限に生かす相乗効果により、温度依存性が極めて小さく、耐久性にも優れた性能を実現した。

 こうした試みの結果、引っ張りせん断強度が20M~40MPaで伸びが200~500%という画期的なポリウレタン系接着剤を開発できた(図5)。エポキシ系接着剤に匹敵する強度とウレタン系接着剤ならではの高い伸びを併せ持つ。

図5 自動車構造用接着剤の強度と伸びの関係
図5 自動車構造用接着剤の強度と伸びの関係
新しい接着剤はバナナカーブを超越している。 (出所:横浜ゴム)
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 ウレタン系接着剤で懸案になりやすい発泡性と硬化速度も問題ない。室温で混合後2~5分後におおむね硬化する速硬化性を持ち、自動車ボディー組み立てラインでの短いタクトタイムにも対応できる。