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写真:JAXA
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宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2020年9月、「H3ロケット」試験機1号機の打ち上げ延期を発表した。開発中の主エンジン「LE-9」で発覚したトラブルが延期の理由だ。燃焼試験で、エンジン燃焼室壁面と液体水素ターボポンプのタービンの動翼に亀裂が発生した。JAXAの発表を基に、トラブルの原因と今後の対策を解説する。

 燃焼室の壁面と液体水素ターボポンプのタービン翼(動翼)で亀裂が見つかった─。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2020年9月18日にオンラインで記者会見を開き、「H3ロケット」の第1段エンジン(以下、主エンジン)「LE-9」の燃焼試験後に発覚したトラブルの詳細を説明した(図1)。この記者会見に出席したJAXA宇宙輸送技術部門H3ロケットプロジェクトマネージャの岡田匡史氏は、以前より「エンジン開発には魔物が潜む。何が起きてもおかしくはない」とロケットエンジン開発の難しさを語っていた(図2)。今回発生した主エンジンの亀裂は、その岡田氏が言及していたエンジン開発につきまとう「小さいが見過ごすことができない魔物の仕業」だった。

図1  LE-9エンジンの燃焼試験
図1  LE-9エンジンの燃焼試験
種子島宇宙センターのテストスタンドで実施したLE-9エンジンの燃焼試験の様子。2020年5月26日に実施した8回目の燃焼試験後、エンジン燃焼室の壁面と液体水素ターボポンプの動翼に、亀裂が見つかった。(出所:JAXA)
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図2 JAXA H3ロケットプロジェクトマネージャの岡田匡史氏
図2 JAXA H3ロケットプロジェクトマネージャの岡田匡史氏
(出所:JAXA)
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