「品質部門が褒められることはない。不良率が下がれば設計開発・製造部門が褒められ、不良率が上がれば品質部門が責められる」─。三菱電機の一連の品質不正に関する調査報告書が2021年10月1日に公開された。社外有識者による調査委員会が実施したヒアリング調査の結果には、品質部門で働く従業員の悲哀がにじんでいた。(中山 力)
2021年、品質不正の発覚が相次いだ三菱電機。7月には社長の杉山武史氏が、10月には会長の柵山正樹氏が引責辞任する異例の事態に陥った(表)。現在も外部の専門家で構成する調査委員会による品質不正の原因究明が続けられている。
そんな中、会長の辞任を発表した同年10月1日に、発覚した複数の品質不正のうち、名古屋製作所可児工場(岐阜県可児市)と長崎製作所(長崎県時津町)についての調査報告書を同委員会が公開した(図1)。最終的には全社で品質不正の調査を進める計画だが、この調査報告書では、両拠点で品質不正が起きた背景や原因を分析し、それらを踏まえた提言を示している。
300ページ近くになる調査報告書には、同社の全従業員に対するアンケート調査の結果に加え、190人に対するヒアリング調査の結果も盛り込まれている(図2)*1。そこには「従業員の本音」がつづられていた。本稿では、このヒアリング調査から明らかになった現場の生の声に基づき、品質不正の背景にある同社の組織体制や企業風土の問題に迫る。