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日産自動車が栃木工場(栃木県上三川町)に導入した「ニッサンインテリジェントファクトリー」は「明日の日産の飛躍の要になる」(同社執行役副社長で生産・SCM担当の坂本秀行氏)という工場だ。「変動強度への対応」と「クルマの複雑化/高度化」を実現する同社の最新生産技術を紹介する。

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 「ニッサンインテリジェントファクトリー」(以下、NIF)は、日産自動車が最先端の技術を投入して構築した次世代の生産ラインだ。まず栃木工場(栃木県上三川町)に導入し、SUV(多目的スポーツ車)タイプの新型電気自動車(EV)「アリア」を新生産ラインで造り始めている。

 NIFが必要となった背景として、同社執行役副社長で生産・SCM担当の坂本秀行氏は「変動強度への対応」と「クルマの複雑化/高度化」を挙げる。

 これからの工場は、人材不足や労働環境の改革などに加え、感染症の流行や天災といった予期せぬ事態や、カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)に代表される環境問題への対策の強化といった変動に強くする必要がある。一方で、生産するクルマは電動化や知能化、多品種化などが進んでいる。こうした環境の変化(変動強度)に対応すべく開発されたNIFは「明日の日産の飛躍の要になる」(同氏)*1

*1 このため、同社はNIFの4本柱を次のように定義する。
  • [1] 電動化やコネクテッドといった新技術を多く搭載する次世代のクルマを造る技術
  • [2]匠(たくみ)の技を伝承したロボットによる高品質なクルマの量産
  • [3] 人とロボットが協働できる働きやすい現場
  • [4] 生産システムのゼロエミッション化によるカーボンニュートラル対応

 NIFでは数多くの革新的な生産技術を導入する。以下では、塗装および組み立てにおける新技術、設備保全、作業者教育の4つに分けてNIFの詳細を解説する。