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世界初の量産装置も

 組立工程での自動化だけでなく、部品の製造や接合といった要素技術でもNIFには新技術を投入している。その1つが、「車載用の量産品では世界初」(同社)と同社が誇る磁石レス界磁モーターの巻線装置だ。

 アリアのモーターは、希土類(レアアース)が必要な永久磁石をローターに組み込んでおらず、8極巻線界磁ローターを採用する。このローターのコイルを製造する。

 同装置では、直径が1.2mmの銅線を先端から繰り出すノズルとローターコアの動きを同期制御し、20分で1台分を巻き上げる。しかも、同時に8個のローターの巻き線を処理できる(図10)。1列に並んだローターコアが間欠的に角度を変えつつ、その上を上下や前後にノズルが動く様は繊維機械のようだ。ちなみに、20分で処理する銅線は1極当たり118周(全長350m)という速さである。

図10 磁石レス界磁モーター(ローター)の自動巻線装置
図10 磁石レス界磁モーター(ローター)の自動巻線装置
直径1.2mm、全長350mの銅線を1極当たり118周、8極合計で944周を20分で巻き上げる。(出所:日経ものづくり)
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 車体の溶接技術も進化させた。アルミ合金製窓枠(ドアサッシュ)の溶接において、スポット溶接を改良した「ディンプル溶接」を採用。プレス加工で細長い小さな山(ディンプル)を形成しておく。従来のスポット溶接では電極の接触面積を確保するためにある程度の幅が接合部に必要だったが、ディンプル溶接では電極を小型化できるので幅を5mm短縮できる。フロントピラーを細くできるため、ドライバーの視界が良くなる。