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2018年6月、大韓航空703便が成田国際空港(成田空港)に着陸した際、同機主脚の車軸が折損。走行できなくなった。事故の原因は、車軸のピボット穴に発生した応力腐食割れ。割れがある状態のままで運行し続けた結果、着陸時の折損につながったと考えられる。
重大インシデントとして原因究明に当たった運輸安全委員会は、2019年9月末、調査報告書(以下、報告書)を公表した1)。本稿では、報告書を基にこの事故の概要と原因について解説する。
車軸のピボット穴に応力腐食割れが発生
重大インシデントが発生したのは2018年6月29日。同日10時38分に韓国・仁川国際空港を飛び立った大韓航空703便(機体はボーイング777-300型)は同日12時37分に成田空港に着陸した。12時41分ごろ、ゲートに向かって走行していた同便の右側後方を走行中だった他社機から管制官に、“703便の右側主脚後方から煙のようなものが見える"旨の無線通報があった。管制官は703便に停止するように指示。停止後、機体を確認したところ、右主脚の車軸が破損してタイヤが異常な方向を向いており、作動油が漏れていた(図1)。火災の発生はなく、乗務員と乗客にけがはなかった。
その後、機体の損壊状況を調べたところ、右主脚後方の車輪(11番と12番)をつなぐ車軸が真っ二つに割れ、ステアリング機構も破損するなどしていた(表1、図2、3)。