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2019年6月19日、東邦航空(東京・江東)のヘリコプターが東京ヘリポートを離陸して神奈川県愛川町上空を飛行中、第1エンジン(左側)が停止。同町内の中津川河川敷に不時着した。国土交通省の運輸安全委員会による調査の結果、第1エンジンの破片がエンジンケースを貫通して損傷しているのが見つかった。

 運輸安全委員会が21年5月27日に公表した事故調査報告書(以下、報告書)を基に事故の概要と原因を解説する。

 事故機である「アエロスパシアル式AS355F2型JA6697」(以下、事故機)は、19年6月19日午後5時35分に東京都江東区にある都の「東京へリポート」を離陸した。乗っていたのは機長と整備士、報道カメラマンの3人。カメラマンの取材現場である、神奈川県北部に位置する愛川町を目指して高度約610mで飛行した後、取材現場の上空に差し掛かった午後5時51分から、時速約110kmで飛びつつ撮影を開始した。

左エンジン損壊・停止で不時着

 機長が異常を感じたのは午後5時55分頃だ。「ボン」という小さな音と振動を感じた。同時に、第1エンジン(左側)の「GEN注意灯」*1と「AUTO注意灯」*2が点灯し、機長は第1エンジンのコンプレッサーとガスプロデューサータービン回転数の指示が「0」になっているのを認めた。

*1 GEN注意灯
エンジンで駆動される直流発電機(ジェネレーター)の注意灯。
*2 AUTO注意灯
エンジン・オートマティック・リライティング・システムの作動を示す注意灯。

 GEN注意灯は、エンジンの回転数が低下し、発電電圧が低下していると点灯する。一般にエンジンが故障している状態を示す。AUTO注意灯が点灯すると、エンジン・オートマティック・リライティング・システムが作動した状況を示す。これは、ジェットエンジンの燃焼室内での燃焼が止まってエンジンが停止することによる出力低下を検知し、点火装置(エキサイター・イグナイター)を自動的に作動させて出力を回復させる装置だ。つまり、AUTO注意灯はエンジンが停止した時に点灯する。

 エンジンが停止したと判断した機長は飛行規程に従い、2つあるエンジンのうち片方のエンジンが故障した際の非常操作を実施。第1エンジンの停止とほぼ同時に、第2エンジン(右側)の出力を急上昇させたので、運用限界を超えないように上下方向への動きを制御するコレクティブ・ピッチ・レバー*3を下げた(エンジンの出力を下げた)。

*3 コレクティブ・ピッ チ・レバー
プロペラやブレードのピッチの増減を制御し、揚力を調整して機体の上昇下降を操作するレバー。

 事故を避けるために愛川町の中津川河川敷に不時着したのは18時1分。機長は、第1エンジンが停止してから第2エンジンの出力を運用限界近くまで使用していたので、これ以上長時間飛行するのは不適切だと判断したのだ。乗っていた3人は無事だった。