高齢化社会で重要性が高まりつつも人手不足に悩まされている介護現場。その課題解決の一翼を担うのが介護ロボットだ。ところが、普及に伴い介護ロボットの事故も顕在化してきた。国内での発生件数は、年間100件程度と推定できる。実態調査から明らかになった事故やヒヤリハットの事例を解説する。
介護ロボットは、官民挙げての開発と先進的な介護施設への導入が急ピッチで進んでいる*1。慢性的な人手不足に悩む介護現場の負担軽減とサービスの質の向上を図るためだ。しかし、介護ロボットの利用ノウハウはまだ十分に蓄積された状況にはなく、続々と登場する新たなタイプの多様な機器を安全に使いこなすのは簡単ではない。
そこで三菱総合研究所(三菱総研)は、介護ロボット利用の実態調査と分析を実施*2。介護ロボットを使用中の事故や、事故につながりかねない「ヒヤリハット」の事例などをまとめた「介護ロボットを安全に使うためのポイント集」を調査報告書と同時に発行した1、2)。
実態調査で「事故(利用者の受診が必要な事象)が過去1年以内にあったか」を聞いたところ、調査に回答した639施設中の29施設(4.5%)が「あった」と回答*3、4。「受診に至らないがヒヤリハット事例があった」とした施設は89施設(13.9%)だった。
三菱総研は調査に回答した施設のうち、介護ロボット活用のための委員会を月に1回以上開催しているとした115施設の中から、6施設に対して聞き取り調査を実施。以下では、そこで判明した、事故やヒヤリハットの具体例を紹介する。