全5497文字
PR

電気自動車(EV)の火災事故が世界各地で相次いでいる。衝突事故に伴う炎上など原因はさまざまだが、共通するのが事故処理の難しさ。一度鎮火してもバッテリーの発熱によって再燃してしまうのだ。全米防火協会(NFPA)や米国家運輸安全委員会(NTSB)の調査結果から実態に迫る。

 2021年4月17日夜、米国テキサス州ヒューストン北部で米Tesla(テスラ)の電気自動車(EV)「モデルS」が木に衝突して炎上し、2人が死亡した(図1*1。テスラ以外のメーカーのEVでも火災事故が相次ぐ。21年8月14日にはドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)のEV「ID.3」がオランダで充電後に発火*2。米GMの「Bolt EV」も充電中に電池から発火した事例が複数あり、GMは3回にわたってリコール(回収・無償修理)を発表した*3

図1 21年4月17日にテキサス州で事故を起こしたテスラのEV
図1 21年4月17日にテキサス州で事故を起こしたテスラのEV
木への衝突で、EVの前方に搭載したバッテリーパックが損傷し、火災が発生した。(出所:NTSB)
[画像のクリックで拡大表示]
*1 地元警察の発表では、事故時の運転席が無人だったことから、事故直後はテスラの運転支援システム「オートパイロット」との関連が注目を集めた。ただし、米国家運輸安全委員会(NTSB)は21年5月10日、事故現場で状況を再現した結果、左右の走行方向を制御する「自動操舵(そうだ)機能(Autosteer)」は作動不可能だったとする初期調査結果を公表した。オートパイロットを使うには自動操舵機能と、前方車との距離を制御する「交通量感知型クルーズコントロール機能(Traffic Aware Cruise Control)」の両方を作動させる必要がある。
*2 ID.3の電池は韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)製とみられる。
*3 Bolt EVの全モデル、合計約14万台がリコール対象となっている。電池はLGエナジーソリューション製。

 これらの事故で明らかになったのが、EVの車両火災の危険性の高さ、特に消火の難しさだ。全米防火協会(NFPA)と米国家運輸安全委員会(NTSB)の資料を基に、EV火災事故の詳細について解説する1~4)