ビル内を警備する自律移動型のロボットが、オフィスビルのエレベーター扉前で立ち往生。乗客の進路をふさぐトラブルが発生した。エレベーターはロボット専用運転で本来はかご内に乗客はいないはずだった。しかし、ロボットのメーカーらは「乗客がいるのは想定内だった」と話す。
トラブルが発生したのは2021年11月21日。場所は、東京都港区にある複合施設「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」(以下、竹芝タワー)の1階エレベーターホールだ*1。
竹芝タワーは、ビル内を警備する自律移動型のロボットとして、SEQSENSE(シークセンス、東京・千代田)が開発した「SQ-2」(図1)を導入していた*2。SQ-2は、竹芝タワーが採用していた三菱電機のビル管理向けIoTプラットフォーム 「Ville-feuille(ヴィルフィーユ)」と連携。ヴィルフィーユが無人と判断して、ロボット専用運転に切り替えたエレベーターに乗り込んでフロアを移動できる*3。
ヴィルフィーユが無人と判断するのは、行き先ボタンが押されておらず、行き先階が指定されていない状態だ。そのタイミングで巡回中のSQ-2からエレベーターに乗る要求が届くと、エレベーターをロボット専用運転に切り替える。
トラブルが発生した11月21日も、1台のSQ-2がフロア間移動のためにエレベーターの扉前でかごの到着を待ち構えていた。しかし、扉が開くとかご内には足の不自由な男性1人と、その男性の両脇を抱えるようにして介助に当たっている女性2人がいた。
無人のはずのかご内に3人の乗客
大学教員で映像制作などを手掛ける武田圭史氏は、たまたまSQ-2と3人の乗客とが「押し問答」する現場に居合わせ、その様子をスマートフォンで撮影した*4。その映像を基に、トラブル発生時の様子をみてみる(図2)。
1階エレベーターの扉前でSQ-2が待機していたのは午後3時40分ごろ。SQ-2のスピーカーからは、「こちらのエレベーターはロボット専用運転です。ロボット以外の操作は受け付けませんのでご注意ください」とのアナウンスが流れている。
扉が開くと、全高1300mmのSQ-2を前にたじろいだ様子の3人の乗客がいる。それでもSQ-2はかご内に移動を始め、扉のレール上で止まってしまう。女性の1人が「ロボットがいるので降りられない」と周囲に訴える。SQ-2とかごの間は1人なら通れそうだが、足の不自由な男性を抱えているので出られない。
扉が開いてから約1分後、見かねた武田氏が乗客を助けようとかごに接近する。同氏は、防災センターに連絡を入れるためのボタンに気付き、防災センターを呼び出すが応答がない。
扉が開いてから約1分30秒後、SQ-2のスピーカーを通して、防災センターからの「ロボットから離れてください」という指示が聞こえる。武田氏は「ロボットが動かないので降りられない。足の不自由な人が乗っている」と訴える。
映像に残っているのはここまで。武田氏によると、一向に警備員が姿を見せないのに業を煮やした同氏が、動かないSQ-2を抱きかかえるようにしてかごから離した。この後、乗客3人はかごから出られたという*5。