2021年4月、埼玉県日高市の太平洋セメント埼玉工場にある自家発電設備のボイラーが爆発した。この爆発によってボイラー本体とその架構、付帯設備が工場敷地周辺の広範囲に飛散。パチンコ店の設備の破損や駐車中の自動車の火災などの被害を引き起こした。爆発の原因は、外部熱交換器の蒸発器管の破孔に伴う水蒸気爆発である可能性が高い。
爆発事故が発生したのは、太平洋セメント埼玉工場(以下、埼玉工場)の自家発電設備の循環流動層式(CFB:Circulating Fluidized Bed)ボイラーだ。
2021年4月26日午後9時58分、自家発電設備の通常運転中に爆発。この爆発によってボイラーの火炉(燃焼室)と外部熱交換器(FBHE:Fluidized Bed Heat Exchanger)のエアー室が脱落した(図1)。火炉と煙道の前壁や後壁、右壁の管パネルが湾曲変形。ボイラー本体の支柱と工場各階の梁(はり)が変形するなど大きな被害が出た。
被害は工場周辺にも及んだ。金属片や保温材など発電設備のがれき、珪砂(けいさ)や石灰石など発電設備の炉材、石炭や木質チップなど発電設備の燃料の燃え殻が、工場から南南東方向へ最大 5kmの距離まで飛散。パチンコ店の屋根や屋上照明設備、監視カメラなどが損傷した。この他、パチンコ店に駐車していた車両40台に被害を与え、1台は全焼した。人的被害は4件。パチンコ店の駐車場にいた人が腰痛や耳の不調、体調不良などを訴えた。
同社は事故後、社外委員2人と社内委員2人から成る事故調査委員会を設置。事故の原因究明と再発防止策の策定に当たった。本稿では、公開された調査報告書を基に、事故の原因と対策を解説する1)。