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2021年4月、トラックの火災事故をめぐる裁判で、大阪高裁が製造元であるいすゞ自動車の製造物責任を認め、同社に約9400万円の損害賠償金を支払うよう命じた。今回から3回に分けて、この裁判における裁判所の製造物責任の判断を解説する。第1回は「点検・整備に不備があった」として、トラック所有者だった東和運送(大阪府寝屋川市)の請求を認めなかった一審大阪地裁の判断を中心に取り上げる*1

*1 東和運送の事故当時の所在地は大阪市。

 事故が発生したのは2012年7月7日午前2時20分ごろ。大型トラックが広島県東広島市内の山陽自動車道を走行中、ファンベルトが何かに当たっているような「パタパタ」という異音に運転手が気付いた。その後、「ドン」という大きな異音がしてタイヤがバーストしたため、運転手が路肩に停車させたところ、車体下部から炎が出ていた。

 運転手の通報を受けた消防隊が消火に当たったが、車両と積み荷が全焼。この時、車両が停止した地点からその手前約100mの地点まで、路面にエンジンの部品が散乱していた。

 事故後の調査の結果、直列6気筒式ディーゼルエンジンのシリンダーブロックの壁に穴が開き、開口部から流出したエンジンオイルが高温部に付着して発火したと判明した(図1)。また、エンジン内部にあった6個のコンロッドのうち、進行方向前方から5番目と6番目のコンロッドが大破していた(図2)。

図1 シリンダーブロックの左側面
図1 シリンダーブロックの左側面
写真左手が前方。内部のクランクシャフトのコンロッド軸受け部がむき出しで、コンロッドが消滅しているのが分かる。(写真:佐藤国仁)
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図2 事故後のエンジンの全体状況
図2 事故後のエンジンの全体状況
進行方向前方から5番目と6番目のコンロッドが大破していた。また、シリンダーブロックの壁が破損して穴が開いていた。(出所:佐藤国仁)
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 トラックの所有者だった東和運送は2014年4月9日、「エンジンが出火したのは、シリンダーブロック内部のピストンとクランクシャフトを接続するコンロッドの強度不足が原因だ」として、トラックの製造元であるいすゞ自動車と販売元であるいすゞ自動車近畿を相手取り、1億526万3241円の損害賠償を求めて提訴した*2

*2 この他、全焼したトラックについて対物共済契約を締結していた近畿交通共済協同組合(大阪市)が約640万円の損害賠償を求めていた。本稿では東和運送の損害賠償請求についてのみ取り上げる。

 これに対していすゞ自動車は、「火災が発生したトラックの使用状況やメンテナンス状況には問題が多く、適正でなかった」と反論。真っ向から対立した。