全5576文字
PR

広島県東広島市内で発生したトラックの火災事故をめぐる裁判で、大阪高裁は製造元であるいすゞ自動車の製造物責任を認め、トラックの所有者だった東和運送(大阪府寝屋川市)に車両や積み荷の損害など約9400万円の損害賠償金を支払うよう命じた*1。今回は、トラックの火災が発生したメカニズムに対する大阪高裁の判断を取り上げ、今後、トラックのエンジン出火事故をめぐる訴訟などに与える影響を考察する1)

*1 東和運送の事故当時の所在地は大阪市。

 事故は2012年7月7日に発生した。広島県東広島市内の山陽自動車道を走行中だったトラックのエンジンから出火。車両と積み荷が全焼した。事故後の調査の結果、直列6気筒式ディーゼルエンジンのシリンダーブロックの壁に穴が開き、開口部から流出したエンジンオイルが高温部に付着して発火したと判明した(図1)。

図1 シリンダーブロック右側の開口部
図1 シリンダーブロック右側の開口部
(写真:佐藤国仁)
[画像のクリックで拡大表示]

 トラックの所有者だった東和運送は、「エンジンが出火したのはコンロッドの強度不足が原因」として、トラックの製造元であるいすゞ自動車らを相手取り、車両と積み荷の損害など1億526万3241円の損害賠償を求めて提訴。これに対していすゞ自動車は、「火災が発生したトラックの使用状況やメンテナンス状況には問題が多く、適正でなかった」と反論。真っ向から対立した。

 前々回(本誌2022年9月号)で解説したように、一審(大阪地裁2019年3月28日判決)では「原告がトラックを通常の用法に従って使用して必要な点検・整備を適切に実施していたとはいえない」と判断。その上で原告の東和運送によるトラックの設計・製造上の欠陥に関する指摘を認めず、被告いすゞ自動車の損害賠償責任を否定した。

 しかし、控訴審(大阪高裁2021年4月28日判決)はこの大阪地裁判決を覆し、被告いすゞ自動車に請求金額のほぼ全額に近い約9400万円の支払いを命じた。いすゞ自動車は上告受理申し立てを申請したが、最高裁判所はこれを不受理。大阪高裁の判決が確定している。