スーパー電波望遠鏡「アルマ(ALMA=Atacama Large Millimeter/submillimeterArray)」は66台のアンテナで構成された世界最大の干渉計である。アルマはサブミリ波という極めて波長が短く微弱な電波を捉える。そのための受信機は天文学者たちが半導体素子から自分たちで作り上げる必要があった。
アルマ望遠鏡は人類が創り出した、宇宙を見る、知る、最大の眼だ(図1)。
2013年3月の開所式から5年。アルマは、期待以上の成果、宇宙の成り立ちを明かし続けてくれている。
それは、「私はどこから来たのか?」「私を作っている物質はどう生成されたのか?」、つまるところ「私とは何か?」という究極の問の答が続々と出ていることを意味する。
「私とは何か?」は長いこと哲学の根本的な問だったが、その答を天文学という科学が、それを支えるとてつもない「ものづくり」がもたらしてくれる時代に立ち会えたことは、大きな幸運だと思わずにはいられない。
だからこそ私は、アルマとは何か、どう創造されたのかの「技術」を知りたかった。
2001年4月。私は国立天文台(三鷹市)に石黒正人さん(現・名誉教授)を訪ねた。石黒さんはアルマ計画の初期構想を立案、牽引した干渉計のスペシャリストとしてその実現に奮戦していた。この取材から私のアルマの取材は本格化したのである(図2)。