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「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者や社員が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み

市場環境の変化を乗り越え、かつ競争力を高めるために、他社との業務提携や資本提携を考えています。中・長期の経営計画を練る上で、現状の当社では手薄ながら今後重要になるとみられる部分を提携によって補うことにしました。ただ、提携後に本当にうまくいくかどうか、懸念がないとはいえません。提携を成功させる秘訣はありますか。

編集部:提携といえば、2019年8月末に大きなニュースが飛び込んできました。トヨタ自動車とスズキが資本提携に合意したというニュースです。しかし、トヨタ自動車とスズキが互いに技術や商品を補完し合えるかというと、正直なところ疑問に思います。両社の発表したリリースには「トヨタが持つ強みである電動化技術とスズキが持つ強みである小型車技術を持ち寄り、商品補完を進める」という説明がありますが、小型車ならトヨタ自動車は子会社のダイハツ工業で技術を持っています。トヨタ自動車がスズキと資本提携を決めた動機がいまひとつはっきりしません。

肌附氏—自動車業界では今、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に対応するための開発負担が非常に重くなっており、いわゆる「自前主義」はどんどん難しくなっています。中でも自動運転の開発には数千億円~兆円規模に迫るほどの莫大な資金が必要ともいわれるようになりました。これほどの投資は、スズキに限らず、なかなか1社でまかなえる金額ではありません。

 そこで、自動車メーカーごとにばらばらに開発するよりも、複数の企業で費用や開発リソースを負担し合い、開発した技術を共有する方が、リスクを最小限に抑えられるという考え方があります。トヨタ自動車もそう考えたのでしょう。

編集部:トヨタ自動車は2016年に人工知能(AI)開発の本場である米国にトヨタ・リサーチ・インスティテュート(Toyota Research Institute)を立ち上げてまで、自動運転技術の開発を積極的に進めてきました。スズキとの間に、既に大きな開発実績の差が開いていると見られます。莫大な資金や長い時間を投じて開発してきたこれまでの自動運転技術を、他社に提供するようなことになったとしても構わないのでしょうか。