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「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み

部品メーカーの社長を務めています。規模は大きくありませんが、成形技術には定評があり、開発型の企業として顧客から評価されてきました。ところが、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)への対応がうまくいっていません。役員以下に発破をかけているのですが、「笛吹けど踊らず」です。新規分野への挑戦を促す良い方法はありませんか。

編集部:日本には優れた加工技術や材料技術を持つ企業がたくさんあります。そうした技術が日本の強いものづくりをこれまで支えてきました。ただ、そうした技術の延長線上にCASEの世界が見えるかといえば、そうとは言い切れないところがあります。

 電動化により、駆動部(パワートレーン)に必要な技術の主体が機械工学から電気・電子工学に変わります。コネクテッドではITやセキュリティー技術などが、自動運転ではさらに人工知能(AI)技術までが必要になります。こうしたコンピューター科学分野の技術は、これまで日本の自動車業界があまり扱ってこなかったものです。しかも、専門技術を持つ「テックカンパニー」と呼ばれる世界的なIT企業などとも競争しなければなりません。

肌附氏—その通りです。この悩みを聞いて、2020年3月にトヨタ自動車が発表した組織体制の変更が頭に思い浮かびました。課長から社長の間に「幹部職」と「執行役員」がいるだけ。すなわち、管理職の課長から社長までわずか4階層というフラットな組織体制に変える改革です。

編集部:私もその発表にはとても驚きました。日本で最も売り上げが大きく、好業績でもあるトヨタ自動車が、まさかリストラクチャリング(リストラ)を行うのかと。リストラといっても、社員を早期退職に追い込むわけではありませんが、トヨタ自動車の副社長ポストは、担当分野で他社の社長ほどの大きな権限を持ち、責任を負うと聞いたことがあるからです。トヨタ自動車はなぜ、ここまで大胆なリストラを断行したのでしょうか。