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全員参加の本質は「全体最適」

編集部:しかし、参加者同士が直接話し合えないリモートワークの時代には機能しなくなる恐れがないでしょうか。

肌附氏—そんなことはありません。大切なのは、工程検討会の本質を押さえること。それは、全体最適の追求です。工程検討会では部門の壁を越えて全員参加を実現した上で、良いクルマを造るという1つの目標に向かって皆のベクトルをそろえることが重要です。

 ところが、工程検討会では、分野間で利害の衝突が多々起こります。例えば、エンジンのシリンダーヘッドなど鋳物部品では素形材分野と機械加工分野は意見がぶつかります。素形材分野としては加工代(しろ)が多い方が鋳造しやすい。一方で機械加工分野は切削量が増えるため、加工代をギリギリまで減らしてほしい。ここで全体最適の視点で加工代を判断するのです。すなわち、製造コストが最小になる加工代を割り出し、両分野がそれに従うというわけです。

 いわゆる大部屋制の基本は全員参加であり、その本質は皆が全体最適の視点で考えるところです。ただし、全員参加では自分の考えや思いを持って主体的に臨まなければなりません。参加するだけで黙っていては参加していないのと同じです。このポイントさえ押さえれば、全員参加はリモートワークであっても十分に機能します。

イラスト:高松啓二
イラスト:高松啓二
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肌附安明(はだつき・やすあき)
HY人財育成研究所 所長
トヨタ自動車にて約30年間にわたり、技術者として多くの新車プロジェクトで生産技術設計や生産設備の立ち上げ業務をこなす。その後、社員の人材育成や協力会社への育成指導、役員への企画提案を約10年間行った。2008年に同社を定年退社後、HY人財育成研究所を立ち上げ、人材育成や業務の進め方について講演・執筆活動を精力的に展開している。書籍に「トヨタで学んだ心 伝承塾【リーダー編】」「同【チーム編】」(共に日経BP)がある。