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 ある病院では数十人の看護師が一斉に辞めたといいます。報酬面に不満があったのかと思ったのですが、そうではないというのです。看護師は、患者を助けようと取り組んだ日々の頑張りに対し、ねぎらいの言葉を掛けてほしかったと話していました。自分の身を感染リスクにさらしながら患者や国民のために尽くしてくれる看護師に対し、心ない言葉を発する人が中にはいるのです。懸命に働いていても誰からも感謝されないと感じれば、心が折れて職場を去る決断をする人がいても不思議ではありません。

 これは医療業界に限った話ではなく、製造業にも同じことが言えます。厳しい環境にあるときこそ、リーダーである管理者は部下を支えなければなりません。

 トヨタ自動車の管理者は昔から、厳しい現場で頑張っている部下の働きに目を配り、ねぎらいの言葉をかけるのを大切にしてきました。かつて私の上司は皆そうでしたし、そうした上司から学んだ私自身も部下に同じように接したと自負しています。こうした“伝統"が今の新型コロナ禍のようなかつてない厳しい環境下でも、トヨタ自動車にとって業績回復の原動力になっていると感じます。

編集部:確かに、部下が意気消沈して気持ちが仕事から離れてしまうようでは大変です。しかし、部下をねぎらうといっても、簡単そうに見えて実は何をしたらよいかが分からないという管理者もいるのではないでしょうか。そもそも、生産効率の向上やコスト低減、予算といった経営上の数字の達成に日々追われていて、そこまでできないと思う管理者が多いかもしれません。

肌附氏—できることからやればよいのです。大切なのは、管理者が自ら現地に足を運び、現場で働く部下とコミュニケーションをとって、その働きに対してねぎらいや感謝の気持ちを直接伝えることです。「私の働きを、上司はきちんと見てくれている」と部下に思ってもらえれば、それで十分なのです。

 最近思うのは、今の管理者は考えすぎるあまり、腰が重いのではないかという疑問です。まずはやってみる、動いてみる。すると、新たな気づきが得られ、結果的に課題解決や改善に近づくというふうに、もう少し気楽に構えた方がよいのではないでしょうか。

編集部:具体的にはどのように行動したらよいのでしょうか。トヨタ自動車時代に肌附さんが出会った中で、印象に残っている管理者の事例があれば教えてください。