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産総研、民間からの委託研究を5年で3倍に

 産業技術総合研究所(産総研)は2001年に、通産省(当時)工業技術院の15研究所が統合・再編されて発足した公的研究機関(国立研究開発法人)である。発足以降、5年ごとに中長期計画/中長期目標が作成されており、現在は第4期(2015年~2019年度)となる。

フラウンホーファーに学び「橋渡し」を強化

 経済産業省や産総研の担当者は第4期の中長期計画/中長期目標を作成するにあたりフラウンホーファー研究機構(以下、フラウンホーファー)を視察するためにドイツを訪れた。産総研は発足当初から「技術を社会へ」をミッションとしていたが、どうしてもシーズ先行の研究が主体になる悩みがあった。そこで企業と連携した応用研究で実績があるフラウンホーファーに目を付けたわけだ。

 担当者らが注目したのが、企業からの委託研究の規模の大きさである。Part1で触れたように、フラウンホーファーモデルでは企業からの委託研究が研究総予算の1/3を占める。委託研究の規模の大きさがフラウンホーファーの研究内容をシーズ先行ではなくニーズ主導にし、基礎研究と企業の応用を結びつける「橋渡しの機能」を生み出している。

 こうした知見を基に、産総研の第4期の中長期目標では、基礎研究と企業の応用を結びつける「橋渡しの機能」の強化が最重要課題として設定された。具体的な目標として民間企業からの研究資金の獲得金額を5年間で3倍に拡大する目標が設定された。民間から獲得した研究資金の平均額である年間46億円(目標設定当時の過去3年間の平均)の3倍にあたる年間138億円が目標値として設定された。

大学と企業との連携を深める

 橋渡し機能の具体的な強化策は大学側と企業側の両面に対して行う(図A)。まず産総研の中に企業の名を冠したその名も「冠ラボ」を設置した。既に9社が冠ラボを設置している。企業との共同研究はこれまでもあったが、産総研内にその企業専用の研究室を設置するのは初めて。産総研のエース級の研究者を参画させる。また、主に中小企業を対象に産業ニーズを探り、産総研の技術シーズと結びつけるコーディネーターも増やした。企業に対する技術コンサルティング制度も第4期から開始している。

図A 産業技術総合研究所における橋渡し機能の強化策
図A 産業技術総合研究所における橋渡し機能の強化策
2016年以降、オープンイノベーションラボラトリ(OIL)として8カ所、冠ラボ(連携研究室)として9カ所を開設した。これらのほか、技術マーケティングを推進するイノベーションコーディネーターを約160人配置している。
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 学校側との連携強化では「オープンイノベーションラボ(OIL)」を開設。産総研の研究者が大学に常駐し、共同で研究する。産総研の研究力向上という側面よりも、企業側に橋渡しできる基礎研究の幅を広げる狙いだ。

 取り組みの成果はどうだろう。2018年6月時点では2017年度の実績が未公表だが、2016年度の実績では1.5倍以上になっている(図B)。この金額は、各年度で定められた目標数値と比較すると8~9割程度だが、確実に成果が出始めている、とはいえそうだ。

図B 民間資金の獲得状況と今後の目標
図B 民間資金の獲得状況と今後の目標
第4期(2015~2019年度)の5カ年計画では、民間資金の獲得金額を3倍にすることが目標となっている。
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