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 凡庸な製品を日本で造る時代は終わっている。厳しい低価格競争に陥り、新興国に勝てる見込みは極めて低いからだ。樹脂製品はその典型例。特徴のない樹脂製品の生産を自動化したところでこの状況は大して変わらない。

 それなら、特徴のある機能を備えた付加価値の高い樹脂製品を選んで自動化で造るのはどうだろう。東芝機械エンジニアリング(本社静岡県沼津市)はこの考えから、ミリ波レーダー対応エンブレムの生産を自動化できる「インライン加飾システム」を開発した(図1*1

図1 ミリ波レーダー対応エンブレム
図1 ミリ波レーダー対応エンブレム
電磁波であるミリ波を透過する機能を備える。高機能故に価格が高い。
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*1 ミリ波 周波数が30G~300GHzで波長が1~10mmの電磁波のこと。

 エンブレムは自動車メーカーのロゴやブランドマークをデザインした、クルマのフロントグリルの中央に取り付ける意匠部品である。これに、内側(裏側)に配したミリ波レーダーの電波を透過する機能を備えた。

 ミリ波レーダーは実用化が急速に進む、クルマの先進運転支援システム(ADAS)や自動運転で必須の装備で需要が増えている。しかも、機能の異なる層を重ねて造る製品のため、1つの工場で、少ない工程で造り上げることが難しい。故に高付加価値製品になるわけだ。

 図2がミリ波レーダー対応エンブレムの断面の模式図。表側を上に、裏側を下に描いた。上から順に[1]ポリカーボネート(PC)製成形体、 [2]ロゴやブランドマークを印刷するカラー加飾層、 [3]ミリ波レーダーを透過するインジウム製の電磁波透過膜、 [4]接着剤であるプライマー層、 [5]電磁波透過膜を腐食(酸化)や傷つきから保護するコーティング層、の5層構造となっている。

図2 ミリ波レーダー対応エンブレムの断面構造
図2 ミリ波レーダー対応エンブレムの断面構造
最上位の成形体の裏面に、カラー加飾層、電磁波透過膜、プライマー層、コーティング層を形成した5層構造となっている。
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射出成形時間を基に各装置が連携

 ミリ波レーダー対応エンブレムの工程は、先の断面構造に合わせた5つから成る。すなわち、(1)射出成形工程、 (2)カラー加飾工程、 (3)金属製膜工程、 (4)プライマー塗布工程、 (5)コーティング工程、である。現行ではそれぞれの工程が分散しており、エンブレムを造るメーカーは自社で対応できない工程を外注するのが基本だ。そこで、これらの5工程を1つに集約し、ワークの取り出しや搬送など工程間をつなぐ作業に産業用ロボットを使ったのが、東芝機械エンジニアリングの自動化システムである。

 新しい自動化システムの構成は図3の通り。①電動式射出成形機と②インクジェット式加飾装置、③枚葉式スパッタリング装置の各装置に、プライマー塗布とコーティングを1台でこなす④インクジェット式プライマー/コーティング装置、の4台を配置し、その中央の空間に垂直多関節ロボットを2台(AとB)、インクジェット式プライマー/コーティング装置の横(端)には水平多関節ロボットを1台設置している。

図3 新しい自動化システムの構成
図3 新しい自動化システムの構成
4台の装置をコンパクトに配置し、中央の空間に2台のロボットを、インクジェット式プライマー/コーティング装置のそばに1台の水平多関節ロボットを設置した。これらのロボットが各装置間のワークの搬送を担う。 (出所:東芝機械エンジニアリング)
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 工程を集約する上でのポイントはサイクルタイムの設定だ。最も長い(1)の射出成形工程のサイクルタイムである80秒に合わせて他の工程も進む。他の工程のサイクルタイムの合計が80秒からずれると、工程間に仕掛品がたまったり、待ち時間が発生したりするからだ。そこで、(2)のカラー加飾工程を30秒、(3)の金属製膜工程を20秒、(4)のプライマー塗布工程と(5)のコーティング工程を合わせて30秒に設定した。これにより、ワークは新しい自動化システム内をよどみなく流れ、80秒に1個のペースでミリ波レーダー対応エンブレムが出来上がる。