製品デザインに外部の力を取り入れ、殻を破ろうとしているのが、パナソニックのアプライアンス(AP)社だ。事業部門ごとに2カ所(草津地区、門真地区)に分かれていたデザイン部門を集約し、2018年4月に「Panasonic Design Kyoto」を京都市内に開設した*1。AP社のデザイン部門におけるグローバルでの中核拠点との位置付けだ。
*1 従来、AP社のデザイン部門は、白物家電向けが滋賀県・草津地区に、テレビやオーディオといった黒物家電向けが大阪府・門真地区にと、製品開発部門や主要工場の近くに置いていた。
「事業部門から一歩離れた方が、世の中の動きに敏感になるはず」(AP社デザインセンターデザイン統括部主幹意匠技師の脇田郁子氏)と、草津と門真の中間に位置し、かつ東京にもアクセスしやすい京都に設置したという。
外部の情報を取り入れて価値に変換
同拠点の重要な役割が、まさしく製品デザインにおけるオープンイノベーションである。脇田氏は、「デザイナーの集結だけでなく、クリエイティブハブとして社内外の人に集まってもらいたい」と意気込みを語る。
それを具現化すべく、京都市内のビルの4~9階に居を構えるDesign Kyotoは、従来とは全く違った施設となっている。コンセプトは、「デザイナーによる情報から価値への変換」。上層階ほど外の人が出入りできるオープンな場とし、そこから上質な情報を取り込み、下層階に行くに従ってその情報をデザイナーが咀嚼・加工して具体的なデザインへと落とし込む、という流れを想定する(図1)。
具体的には、9階には外部講師を招いた勉強会やセミナー、交流会などを開催するためのスペースを確保。8階は開発プロジェクトのメンバーや社外パートナーとの会議・ミーティングのための空間となっている。
中層階(6、7階)は、フリーアドレス制のデザイナーの執務スペース。下層階のうち5階は議論のための空間で、可変の間仕切りを使ってプロジェクトに応じたスペースが構成可能。4階はモックアップや簡単な試作品を造るためのワークショップフロアとした。「上階はオープンスペースで、中層階でものを感じ、下層階でより具体的なプロトタイプを使って検討する」(脇田氏)という構成だ。
オープンから1年弱で、具体的成果はこれからだが、想定以上にさまざまな人が集まる活動が展開できているという。例えば上層階では、会議をワークショップスタイルで開催。オーディオや白物家電といった製品の枠を超えて多様な意見を出やすくした。社内外から人を招いて文化から技術、ライフスタイルまで幅広いテーマでセミナーなどを開催する(図2)。