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 前回(2020年1月号)では、非鉄金属材料の代表として「アルミニウム(Al)合金」について解説しました。今回は同じ非鉄金属材料である「銅(Cu)」の特徴や、選択する際のチェックポイントと、近年身近になってきている「チタン(Ti)」や「マグネシウム(Mg)」について紹介します。

 銅は鉄(Fe)よりも早く、人類が幅広く利用した金属材料と言われています。銅の溶融温度は約1000℃と鉄の溶融温度である約1500℃よりも低いため、自然の銅鉱石から銅を取り出すのは、鉄鉱石から鉄を取り出すよりも容易だったわけです。

 銅は加工しやすい点も多用される理由の1つで、めっきやはんだ付けも容易です。銅がユニークなのは、工業製品だけではなく工芸品にも多く使われている点です。金のような色(黄金色)を持つことが工芸品に多用される理由の1つです。時間が経過すると表面に美しく落ち着いた色調の「緑青(ろくしょう)」が生じるので、装飾性にも優れています。工芸品は、化学反応に強い銅の耐食性の良さが生かされる用途でもあります。他の金属に比べて海水に対しても高い耐食性を持っています。

 こうした特徴を生かして、寺社仏閣の内外装に使われているので目にすることも多いでしょう。青銅器時代に造られた装飾品や武器が現存しているほど、銅は耐食性に優れているのです。

高価だが導電性と熱伝導性に優れる

 銅の性質として特筆できるのは、何といっても優れた導電性と熱伝導性です(表1)。ただし、銅の価格は鉄鋼材料の10倍程度と高価で、銅の密度は約8.96×103kg/m3と鉄の密度約7.87×103kg/m3よりも重い点には注意が必要です。また、縦弾性係数が鉄鋼材料の半分なので、同じ力をかけると鉄鋼材料の2倍のたわみが発生します。そのため、銅は機械的性質が求められる構造部品として使用されるケースは少なく、主に物理的性質や化学的性質を生かす目的に使用されます。

表1 銅と鉄、Alの性質
(出所:西村仁)
性質 単位 鉄 (SS400) Al (A5052)
密度 ×103kg/m3 8.96 7.87 2.70
導電率 ×106S/m 59 9.9 37.4
熱伝導率 W/(m・k) 398 80 237
引張強さ N/mm2 355 400 260
硬さ HV 85以上 120前後 60前後
縦弾性係数 ×103N/mm2 103 206 71
線膨張係数 ×10−6/℃ 18.3 11.8 23.5
融点 1083 1530 600

 銅の導電率は金属の中で銀に次いで高く、「銅線」として電気配線に使われているのを日常生活の中でよく目にするでしょう。導電率の高い材料を使うと、電流を流す際のロスが少ないからです。また、銅の価格は銀の1割程度なので、費用対効果の大きい銅が用いられるのです。

 ただし、銅は鉄鋼やAl合金よりも重い(密度が大きい)という難点があるので、高圧電線には使われません。

 鉄塔の間に張られた高圧電線は自重で大きくたわんでいます。それだけ高圧電線は重いのです。もし銅を高圧電線に使うと、その重さを支えるために鉄塔の強度を高めるか、鉄塔の本数を増やさなければなりません。これには大きなコストがかかります。

 従って、少々導電率は悪くなるものの、銅よりも軽いAl合金を高圧電線には採用しています。同じ電流を流す(抵抗を同じ)とすると、銅に比べてAl合金では半分の軽さになります。

 熱の伝わりやすさを示す熱伝導率も、鉄鋼やAl合金よりも銅が優れています。調理器具に使われる銅鍋は熱が伝わりやすく、鍋の底と側面の温度差を小さくできるので、食材を均等に加熱できます。

 ただし、機械的強度が必要な場合には、200℃以下で使用します*1。高温では軟化してしまうからです。鉄を使用できる上限の温度は約1000℃なので、それに比べるとかなり低い温度です。高温には弱いのですが低温には強く、冷やしても耐久性や強度(降伏点と引張強さ)などにはほとんど影響がありません。

*1 例外的に、ベリリウム銅は約600℃まで軟化しない。

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