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 今回から「加工の基礎知識」を紹介します。加工とは、市販されている材料から欲しい形を造り出すための作業です。

 市販材料の多くは、形状と寸法が決まっています。板状であったり丸棒や角棒だったり、断面がL形状のアングル材やC形状のCチャンネルなどがあります。それぞれの寸法バリエーションも豊富です。

 これらの材料をどのように加工していくのがよいでしょうか。さまざまな加工方法が実用化されている中で的確な方法を選ぶためには、加工の全体像と、各加工方法の大まかな特徴を知っておく必要があります。それによって、「図面通り」の品質を「安いコストで」「短時間」に形づくっていけるように加工方法を決められるのです。

 加工方法を決めるのは開発設計者です。加工方法を知らなければ図面は描けません。ただし加工の基礎知識を学ぶ上で、工具の回転数や切り込み量、送り速度といった「加工条件」の具体的な値を知る必要はありません。これらは非常に高度な専門技術なので、プロの加工者に任せればよいのです。

 それよりも、加工条件の設定範囲ができる限り広くなるように設計する方が大切です。加工者が最適な加工条件を選んで、コストや時間を削減できる余地が広がるからです。そのために必要な加工の基礎知識は、開発設計者としてぜひ学んでおくべきでしょう。

事前準備から後片付けまでが加工

 ここからは加工の作業内容を見ていきましょう。加工方法によって細部は変わってきますが、切削加工を例に取ると「事前準備」→「加工」→「測定」→「後片付け」の4つに分解できます(図1)。

図1 加工(切削)の作業内容
図1 加工(切削)の作業内容
いきなり工作機械を動かすわけではなく、事前準備が必要。終了後には後片付けもある。(出所:西村仁)
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 事前準備では図面を読み取り、どの工作機械を使うのか、どの工具を使うのか、どのような手順で加工するかを検討し、必要であれば治具を製作します。治具とは材料の位置を決めて固定するための器具です。

 次の加工ではまず、「材料取り」を行います。購入した定尺寸法の材料から削り代(しろ)*1を考慮し、仕上がり寸法よりも少し大きめに切断する作業です。切断した材料を工作機械にセットし、原点合わせを行います。これを「段取り作業」と呼びます。これらの後、ようやく工作機械のスタートボタンを押して、メインの加工作業を開始できるのです。

*1 削り代
表面を削って仕上げるときに削り落として無くなる余分な部分。切削加工前に、仕上げ寸法に削り代を加えた大きさの材料を用意する必要がある。材料を治具などで押さえるための「つかみ代(しろ)」を加工時に必要な余分な部分として付ける場合もある。

 加工が終われば加工者自身が寸法や形状などを測定し、結果を記録します。最後の後片付けでは、清掃や切粉(切りくず)の処理を行います。金属の切粉は売却できるので、材料の種類ごとに分けて収集します。このように、加工は多くの作業工程を必要とします。