削って形をつくる「切削加工」としてこれまで、「旋盤加工」と「フライス加工」を取り上げました。今回は第3の切削加工として「穴あけ加工」を紹介します。穴あけ加工は、旋盤加工やフライス加工、レーザー加工や放電加工でも可能ですが、ここでは最も一般的な方法である、ボール盤による穴あけ加工について解説します。
穴あけ加工の目的
穴をあける目的はねじで固定するための「ねじ穴」の他に、軸を差し込む「はめあい穴」や、他の部品との干渉を避けるための「逃げ穴」、旋盤加工でワークを保持するための「センタ穴」などがあります。この中で圧倒的によく使われているのは「ねじ穴」です。
部品同士を接合するには、溶接やろう付け、リベット、接着といった多くの方法がありますが、これらはいったん接合すると外すには破壊が伴います。それに対してねじ固定は、何度でも容易に脱着可能な接合方法であるため、広く用いられています。
ドリルであけるのが「きり穴」
2つの部品をねじによって固定するには、一方にねじ(ボルト)*1を貫通させるための穴をあけ、もう一方には穴をあけた後から「めねじ」を加工します。これらの穴あけの工具にはドリルを使用し、ドリルであけた穴を「きり穴」と呼んでいます。
JISの用語として「ねじ」には2つの記述があり、1つは基本用語として「ねじ山をもった円筒又は円すい全体」で、おねじだけでなくめねじも含む。もう1つは締結用部品の用語として「1)ねじ山をもった部品の総称 2)ボルトと対照していう場合は、ナットを組まないで用いるおねじをもった部品の総称」とされる(「ボルト」は「一般にナットと組んで用いるおねじ部品の総称」)。ここでは、締結用のおねじ部品の意味で「ねじ」という場合は「ねじ(ボルト)」などと表記する。
ドリルは、後述するボール盤に取り付けて加工します。ドリルを構成する各部の名称は根本側から先端側に向かって、ボール盤の主軸に固定するためのシャンク、らせん状の溝、そして切れ刃となります。らせん状の溝の外周部は鋭利なので切れ刃のように見えますが、溝は切削のためではなく、切りくずを排出するために設けられています。もし切りくずが穴からうまく排出されなければ、切りくずで工作物を傷つけてしまう恐れがあり、工具の損傷にもつながってしまいます。
ドリルの材質は高速度工具鋼(ハイス鋼)や超硬合金を使っています。ドリルの形状には、「ストレートドリル」と「テーパードリル」があります(図1)。“ストレート"と“テーパー"はそれぞれ刃の形状についての表現ではなく、ドリルをボール盤の主軸に固定するシャンクの形状を意味しています。ストレートドリルの直径(ドリル径)は∅13mmまでで、それを超える径の穴あけには、シャンクの固定信頼性を確保するためにテーパードリルを使います。先端の切れ刃の角度(先端角)は基本的に118°になっています。