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前号まで5回にわたり、加工の5分類の1つ「切削加工」について紹介してきました。今回から5分類の2番目である「成形加工」を解説します。
量産に適した成形加工
切削加工は工具で工作物を少しずつ削って形を造りましたが、成形加工は金型や砂型といった「型」を使い、一気に形を造るという特徴があります。型のコストが高く初期投資が大きい一方で、生産を始めてしまえば1個当たりを短時間で加工できるため生産性が高く、量産品に適しています。プラスチック製品を筆頭に、私たちの身の回りの多くの製品はこの成形加工でつくられています。
成形加工には、主に次の6種類があります。
- 1) 金型で金属の薄板を切断したり曲げたりする「板金加工」
- 2) 溶かした金属を鋳型に流し込んで固める「鋳造」
- 3) 溶かしたプラスチックを金型に流し込んで固める「射出成形」
- 4) 強い力で叩いて変形させる「鍛造」
- 5) 回転するロールにはさみ込んで形をつくる「圧延加工」
- 6) 金型の穴に材料を通して形をつくる「押出し・引抜き加工」
今回は1)の板金加工を解説します。2)以下の鋳造、射出成形、鍛造、圧延加工、押出し、引抜き加工は次号で紹介します。
板金加工の種類
では、成形加工の代表選手である板金加工について見ていきましょう。金属の薄板(以下、板金)に金型を押し付けて(プレスして)変形させるので、プレス加工とも呼びます。板金加工には「せん断加工」「曲げ加工」「絞り加工」「バーリング加工」があります(図1)。
板金は板厚が薄いわけですから、板金加工品は大きな力を受ける箇所には使用しません。そのため軟らかい材料を使います。鉄鋼材料の中でも軟らかいSPCC(冷間圧延鋼板)や、鉄鋼以外ではアルミニウム合金板が主な加工対象になります。