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曲げ加工前の形状や寸法を算出

 曲げ加工は、平面の状態の板金に金型を当てて任意の角度に折り曲げる加工です。一見、簡単に曲がりそうに思いますが、多くのノウハウが必要です。例えば「展開長/展開図」と「スプリングバック」です。

 まず展開長/展開図について説明します。加工前の材料取りにおいて、切削加工の場合に必要な材料の形や大きさは部品の図面から直接読み取れます。ところが、板金の曲げ加工では材料取りの情報を部品図から直接は読み取れません。図面に記された形状や寸法は折り曲げた後の完成状態であって、折り曲げる前の形状と寸法ではないからです。この折り曲げ前の形状を示した図を「展開図」、折り曲げ前の寸法を「展開長」といいます。

 理想の図面は、この折り曲げ前の展開図と折り曲げ後の完成図の2つを描ければよいのですが、実務では完成図しか描かれていないのが一般的です。単に手間の問題だけではなく、展開長を出すのはそれほど容易ではないからです。

 例えば、L形状に折り曲げる場合には、2辺の直線部と曲げ部の4分の1円の長さを足せばよさそうに思えますが、そうはなりません。曲げ加工では、板の内側は圧縮され、外側は引き伸ばされます。板の内部のどこかに圧縮もされず引き伸ばされもしない面(中立面)があるはずですが、中立面は必ずしも板厚の中心に位置しないからです。中立面は板厚の中心よりもやや曲げの内側に位置します。計算式はあるものの、板厚や材質によって条件が変わってきます(図3)。

図3 曲げ加工の原理
図3 曲げ加工の原理
曲げの内側は圧縮、外側は引き伸ばされる。圧縮も伸びもない中立面は必ずしも板厚の中心ではなく、やや内側に位置する。(出所:西村仁)
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 この折り曲げが1枚の薄板の中で2段、3段に増えれば、展開長の算出はさらに複雑になります。こうした理由から、設計者は(心の中で申しわけないと思いながら)完成図のみを記載して、展開図の作成は加工者に任せるのです。