前回(2021年4月号)は図面の役割と図面ができるまでの手順、そして図面はJIS規格(日本産業規格)のルールに基づいて描かれることを紹介しました。
図面の読み手にとって、ポイントとなるのは
- (1)立体のイメージができること
- (2)情報を正確に読み取ること
の2点です。今回はまず、図面から立体のイメージをつかむ方法を紹介します。
なぜ立体図を使わないのか
図面では、3次元の立体形状を2次元の紙の上に表す手段として「第三角法」*1を用いています。この第三角法で描かれた図を理解するには、それなりの知識を持っていなければなりません。しかし立ち止まって考えてみると、立体形状をイメージしやすいのは立体図のはずです。幼児の絵本も立体図で描かれているので、特に知識がなくても理解が容易です。では、図面をなぜ立体図で描かないのでしょうか。
水平面と垂直面によって空間を4つに分けたときの「第3象限」を使う投影法。平面形状は上方の水平面へ、側面形状は右方の垂直面に投影する。第1象限を使う「第一角法」もあり、平面形状は下方へ、側面形状は左方へ投影する。
その理由は、立体図の描きにくさです。実物で水平方向の辺も、立体図では斜めの線で描くことになります。立体を見る向きに応じた長さの調整も必要になります。寸法などを描き込むとさらに複雑になって、見る方にとっても、大きさや角度などの関係を正確に把握しにくいのです。
それに、立体図は全体を描いているように見えて、基本的に半分の面しか表していません(図1)。例えば立方体の面数はサイコロの目が1から6まであるように6面ですが、立体図では最大でも3つの面しか描けません。見えない面や見えにくい角度の面に加工がある場合には、違った角度から見た立体図を追加で描かなければなりません。