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 前回(2022年4月号)は、狙いの品質となる「設計品質」と、できばえの品質となる「製造品質」に分けることの必要性をお伝えしました。今回は、製造品質の管理について考えていきたいと思います。

管理とは維持と改善

 管理という言葉には、前向きなイメージは小さく、決められたルールをきちんと守るといった堅い印象があると思います。しかし、ものづくりの管理ではルールを守る「維持」だけでなく、「改善」と組み合わせて現場力を向上させていきます(図1)。

図1 管理は維持と改善
図1 管理は維持と改善
ルールを守ることで現場力を維持するだけでなく、改善によってルールをブラッシュアップさせていく。(出所:西村 仁)
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 もちろんルールを守ることは大切です。担当者によってやり方が変わると、効率が悪くなるだけでなく、問題が生じたときの原因調査や対策を打つことも難しくなります。またルールがなければ、新入社員や若手社員への教育方法も定まりません。そのためルールを設定して、それを守るように管理することで現場力を「維持」するのです。

 一方、現状のやり方(ルール)を変えることによって強みをさらに向上させ、弱点を克服する「改善」も大切です。改善するとこれまでのやり方とは変わるので、この変わったやり方を「維持」します。

 維持と改善を行う管理の対象は多岐にわたります()。ものづくり現場では、製造品質(Q:Quality)を管理する「品質管理」、製造原価(C:Cost)を管理する「原価管理」、生産期間(D:Delivery)を管理する「生産管理」が基本になります。それ以外にも、ヒトを管理対象とする「労務管理」、原材料を管理する「購買管理」、治具や設備を管理する「設備管理」などもあります。

表 ものづくり現場における管理の対象
製造品質だけでなく、製造原価や生産期間、原材料なども管理の対象となる。(出所:西村 仁)
ものづくり現場の管理対象 管理名称
製造品質(Q) 品質管理
製造原価(C) 原価管理
生産期間(D) 生産管理
ヒト 労務管理
原材料 購買管理
治具・設備 設備管理

 これらの管理によって全社的に効率化を図っていく取り組みを、インダストリアル・エンジニアリング(Industrial Engineering)、略してIE(アイ・イーと読む)といいます。では、製造品質を管理する品質管理について見ていきましょう。