品質管理と聞けば、統計を思い浮かべる方も多いと思います。統計に関する書籍をめくると、多くの統計手法が紹介されており、難しい計算式の羅列に、まるで数学書を読む思いがします。
しかし実務においては、難しい手法を使わなくても、「平均」「範囲R」「標準偏差σ」で多くの問題解決に対応できます。今回は、この3つの統計手法を紹介します。
数値化とグラフ
現状を数値で捉えることは、品質を管理するうえで必須です。例えば、測定値(長さや重さや周波数など)やカウントした発生個数などを生(なま)データといい、横軸に時間を、縦軸に生データの数値を記したものが、QC7つ道具(QC七つ道具)の「グラフ」になります。
この数値化とグラフ化により、
- 1)第三者にも時と場所を超えて見える
- 2)過去から現在までの変化が見える
- 3)将来の予想が見える
- 4)狙いに対する実力が見える
ことがメリットです。
ただし、いま100個のデータがあったとして、このデータの全体をひと言で説明するのは困難です。そこでデータを加工(計算)して、理解しやすいようにします。この加工に使うのが統計手法です。
代表値としての平均値
統計の主な値として平均・範囲R・標準偏差σについて、事例を用いて紹介します。
ここでは営業マンの実力を数値化してみましょう。営業1課(5人)、同2課(5人)、同3課(4人)のある月の販売実績を表1に表しました。所属人数が異なる3つの課の実力を示すのに、誰もがまず思い浮かべるのは1人当たりの「平均値」だと思います。
「平均値=データの合計÷データ数」なので、営業1課の平均値は、(14個+17個+15個+13個+16個)÷5=15個になります。営業2課の平均値も3課の平均値もともに15個になります。このように平均値は代表値を示すので、3つの課の実力を客観的に把握するのに利用できます(今回は意図して3つの課の平均値が同じになるように設定しています)。