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製造業の活性化には、「攻撃的戦略」が必要だ─。日経 xTECHにおいて「國井設計塾 世界で戦える設計マネージャー養成講座」の講座を持つ、國井技術士設計事務所の國井良昌氏はこう説く。戦略を練る設計リーダーには、単なる専門知識だけでなく、コスト感覚や設計審査に関して研ぎ澄まされた力量が求められる。(聞き手は高市清治=日経 xTECH/日経ものづくり)

製造業に長年関わってきたお立場から見て、日本の製造業には今後、何が求められるでしょうか。

國井氏:攻撃的な「戦略マネジメント」です。競合製品に打ち勝つ製品を開発し、設計するという「攻め」の戦略と姿勢が設計者を奮い立たせ、設計部門を、ひいては企業を活性化するはずです。これが今の日本の製造業には欠けています。

攻撃的戦略を立てるのは誰ですか。

國井氏:通常は設計リーダーです。ここでいうリーダーとは社長や役員、部長、課長などの管理職と考えています。

 日本の製造業界は、強い設計リーダーが不在のまま成長してきました。現場が強かったからです。1950年代から全社的品質管理活動(TQC)や総合的品質管理(TQM)を米国から導入。同じ職場内で品質管理活動を自発的に小グループで行う「QCサークル」などを積極的に実践し、現場の力を主に品質を底上げするボトムアップを実現してきたのは周知でしょう。

 半面、トップの力が衰えました。リーダー不在の日本企業は技術革新に踏み込めませんでした。革新がないまま品質管理や品質向上ばかり追求してしまった。変化を恐れた守りの姿勢の結果が、顧客が望まない「過剰品質」だったわけです。

 もしも設計リーダーが存在していれば、品質向上ではなく大胆な技術革新を実現できたかもしれません。「革新」とまでいかなくても、市場ニーズを捉えた軌道修正ができたはずです。

その設計リーダーに攻撃的な「戦略マネジメント」が求められる。

國井氏:そうです。戦略マネジメントとは、事業計画や工程管理、組織作り、危機管理などに関する戦略を練る管理業務です。その中でも競合製品を分析して長所と弱点を見つけ、その製品に勝てる商品を企画する。そして、実際に設計・製造するところまで持ち込むのが攻撃的戦略です。

 分かりやすいのが、競合製品が最優先している機能や性能を把握し、その機能や性能と異なるポイントで競合製品に勝てる設計とする戦略です。ポイントは発想の転換です。

 ハイブリッド車を例に考えてみましょう。競合製品Aは燃費を最優先し、1リットル当たり38km走行する性能を持っていたとします。市場調査や自社の技術などから分析した結果、燃費では競合製品Aに勝てる製品を開発するのが困難だと判明しました。こんなときは「燃費を最優先しない」と発想を転換するとよい。燃費以外で競合製品Aに勝てるハイブリッド車を設計するのです。

 実は競合製品Aは205万円という価格がネックでした。多少割高になっても、燃費や乗り心地を優先していたのです。そんなときは、思い切って価格を最優先する。例えば200万円を切る189万円という価格で勝負をかけ、コストを下げる代わりに燃費を1リットル当たり30kmまで落とす。もちろん、市場調査などの結果から、「この価格なら多少燃費が落ちてもいい」と考える消費者が多いという裏付けを取った上での判断です。