「大幅なコスト削減にはドラスティックな発想の転換が必要」。デンソーで「新興国向低コストプロジェクト活動」をけん引した竹村孝宏氏はこう語る。「日経 xTECHラーニング」で「40%コスト削減! 革新的低コストプロジェクトの進め方」の講師を務める同氏に、デンソーで実現したコスト削減の手法について聞いた。(聞き手は高市清治)

台頭著しい新興国のメーカーとの激しい競争に打ち勝つため、日本のメーカーは大幅なコスト削減を求められています。
竹村氏:本当にその通りです。私は前職のデンソー在籍時に、中国市場への進出に取り組む中で約40%のコスト削減を実現した経験があります。
ほぼ半減ですね。
竹村氏:実際に社内では当初、「コストハーフ活動」と称していました。中国市場への進出にあたって、「半減」を目指すほどのコスト削減を徹底しなければならないような厳しい状況だったのです。
そのために設計から製造に至るフローを根本から見直しました。具体的には「設計ありき」ではなく、「調達ありき」という考え方への修正です。調達し得る安価な材料とその調達先を決めて、その材料を前提に設計を始めるフローに改めました。
日本国内でも実現できますか。
竹村氏:40%削減は難しいかもしれませんが、劇的なコスト削減を実現する根本的な見直しを図る姿勢や考え方は十分、応用できるはずです。
30%安かった中国メーカーの部品
「40%削減」を実現した経緯を教えてください。
竹村氏:7~8年前の話になります。急激な経済成長を続ける中国市場に、世界中の自動車メーカーが進出を図っていました。
中国市場に進出するには、現地法人との合弁が必要です。現地法人のスタッフがいるわけですから、自動車部品でも現地の部品メーカーからの調達を検討し始めます。ちょうどその頃、経済成長に合わせて中国国内でも地場の材料、部品メーカーが勃興していました。品質はそこそこですが、とにかく価格が安かった。だいたい30%は安いのです。
その結果、ほとんどの部品で受注を逃しました。70戦3勝44敗1引き分け、残りの22戦は戦うまでもなくコールドゲーム(不戦敗)です。現地の部品メーカーにまったく勝てないのです。日本では「高品質だから」と認めてもらっていた価格が通用しませんでした。