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「車載機器の信頼性を確保するため、評価試験の重要性が増している」。デンソー基盤ハードウエア開発部担当部長の神谷有弘氏はこう訴える。「日経 xTECHラーニング」で「トラブル回避はこれでばっちり! 車載電子機器の信頼性確保」の講師を務める同氏に、車載機器設計で求められる信頼性を確保のするためのポイントを聞いた。(聞き手は高市清治)

神谷有弘 氏
神谷有弘 氏
デンソー 基盤ハードウェア開発部

車載機器の設計において、信頼性が以前よりもずっと重要になっていると聞きます。なぜですか。

神谷氏:自動車に求められる信頼性は増す一方です。今回は、「寿命」に対する信頼性に限定して話しますが、かつてクルマの寿命は「10年10万km」と言われていました。新車で購入してから10年は故障せず、走行距離が10万kmまでは保つという意味です。これが最近では「20年30万km」と言われるまでになっています。消費者は、事故にでも遭わなければクルマは故障しないと期待しています。

 故障したら保証期間内なら無償での、あるいは必要なら有償の部品交換を求める。いわゆる「永久サポート」を前提に設計しなくてはならないのが実情です。場合によっては、10年以上前の電子製品もきちんと供給提供しなくてはなりません。補給品供給まで考慮して、製品を設計する必要があります。

「モーター化」で熱環境はさらに厳しく

ハイブリッド車や電気自動車(EV)への移行は、信頼性の在り方に影響するでしょうか。

神谷氏:ハイブリッド車やEVはもちろんですが、クルマの「電子機器化」が与える影響は非常に大きい。周知の通り、もはやクルマは車載電子機器の集積です。しかも車体の小型化と居住空間の拡大が同時に求められているので、限られた空間に車載電子機器を詰め込む設計を余儀なくされています。詰め込めば熱環境は悪化します。車載電子機器で最も多いのは熱にまつわる故障です。熱で接合部が破損して本来の機能を喪失するのです。

 時々、EVが普及したらクルマの熱環境はどうなるか、と質問されます。モーターになったら発熱量が減るから熱環境は改善されるのではないか─。こう考えている人が多いのです。そんなことは絶対ありません。モーターはものすごく発熱します。しかも車両メーカーはモーターの近傍にインバーターなどの電子機器を配置し駆動系のモジュール化を考えています。モーターとインバーター、減速機はいずれ三位一体になる。あるいは、それぞれのプラットフォームに合わせたモジュール化が進むと考えます。推測の域は出ませんが、エンジンを搭載したクルマよりも熱環境は厳しくなるのではないでしょうか。

クルマの信頼性にとって熱環境が最重要なんですね。

神谷氏:はい。先ほどEVの話をしましたが、先述したようにエンジン車の車載電子機器も詰め込みが進んでいますから、熱環境は非常に厳しくなっています。車両メーカーが提示した仕様に合わせて設計していればよかったのは過去の話。現在では、車両メーカーの仕様を自分たちで確認して、20年保つクルマにするための各車載部品を設計しなければなりません。車両メーカーの仕様は変わらないのに、温度領域の上限はどんどん上がっています。

 エンジンルームが小さくなるのに合わせて車載電子機器を小さく設計すると、熱密度が上がります。表面積が小さくなるので、自己発熱する個々の電子部品の熱密度が高まるだけでなく、電子部品が密集するので周囲の温度が上がって全体の熱密度も高まるのです。そのため、仕様上耐えられる温度と実際に車両内で発生する温度との差が小さくなり、マージンが減っています。

 このように熱環境が厳しくなっている状況を正しく把握し、従来品と同じ設計思想でよいのかと常に自分の設計の考え方を見直して、新製品の設計に取り組むことが大切です。そうすれば20年保つクルマを実現できます。寿命を20年以上にするなら、製品の使われている熱環境に合わせて評価試験を実施する必要もあります。