全3019文字
PR

「ガソリン車と同等の性能を追求せず、電気自動車(EV)ならではのメリットを生かせば普及の糸口を見出せる」。群馬大学大学院客員教授の松村修二氏はこう話す。「日経クロステック・ラーニング」で「マイクロEVの基礎を設計・製作から理解する」の講師を務める同氏に、EVならではのメリットについて聞いた。(聞き手は高市清治)

松村修二 氏
松村修二 氏
群馬大学大学院 理工学府 知能機械創製部門 客員教授

電気自動車(以下、EV)に対する理解不足を憂慮されています。

松村氏:自動車メーカー自体がまだ、既存のガソリン車の姿にとらわれているように感じます。例えばデザイン。エンジンではなくモーターで駆動するEVはラジエーターやオイルクーラーなどがないので、外気を取り込むフロントグリルは本来、不要のはずです。ところが市販されている電気自動車にはフロントグリルが付いている。空気抵抗に配慮すれば、電気自動車は空気の取り入れ口とその流路にもっと自由度が出ます。合理化を図るよりも、既存のガソリン車と同様のデザインにするのを優先しているように見えます。

 形状だけではありません。強度配分もガソリン自動車と異なってきます。電池重量を除けば、EVは少なくとも搭載しているモーターをエンジンより小さく、軽くできます。エンジン周りだけでも強度を下げれば軽量化も図れます。モーターの小型化だけ取っても、クルマの設計に与える影響は決して小さくありません。既存のガソリン車の設計にとらわれる必要は本来ないはずです。

 また、ガソリン車と同レベルの性能を追求すると、現状ではEVのデメリットが目につきます。ガソリン車の設計や性能から離れ、EVならではのメリットを生かし、小型化まで図ればEVの可能性は広がり、普及の糸口を見出せるはずです。

EVのデメリットとは何ですか。

松村氏:EV普及のボトルネックになっているのが、フル充電で走行できる「航続距離」の短さです。現状ではフル充電時の最大走行距離が、満タン給油時のガソリン車に比べて半分以下です。ガソリンタンクの容量や燃費によっても異なりますが、ざっくり言うと満タン給油時のガソリン車の航続距離は500~1000km程度。EVも充電池容量や電費によって異なりますが、フル充電のEVの航続距離は200~400km程度です。

 充電環境が整っていないのもネックです。充電器の種類や2次電池の出力によって異なりますが、フル充電までの時間の目安は、家庭で使われている100V普通充電器で半日から1日、200V普通充電器でも4~8時間を要します。しかも一般的には、家庭用のコンセントからは充電できず、専用充電器の設置が必要です。ガソリン自動車なら、ガソリンスタンドで満タンに給油するのに5分とかからないですから比較になりません。

 よく言われるのが、エアコンを使うと走行距離が短くなる欠点です。ガソリン自動車ならエンジンの排熱を活用して暖房できます。EVにエンジンはありませんから、暖房には電気を消費するエアコンを使わざるを得ません。

 こうした課題は、効率が高く、急速に充電できる2次電池が開発されればだいたい解決するはずです。しかし、EVの課題を一気にクリアするほど高性能な2次電池の開発のめどは、今のところ立っていません。