全3034文字
PR

「5G活用に最も重要なのは、5Gに対する正しい理解だ」。フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ・ダイレクターの柏尾南壮氏はこう話す。「日経クロステックラーニング」で「5G基地局最前線、分解して分かった5G対応のキーポイント」の講師を務める同氏に、押さえておくべき5Gのポイントについて聞いた。(聞き手は高市清治)

柏尾南壮 氏
柏尾南壮 氏
フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ・ダイレクター

次世代無線通信規格の「5G」とは何か、説明してください。

柏尾氏:5Gは「第5世代移動通信システム」を意味します。「5thGeneration」(第5世代)を略して「5G」というわけです。日本では2020年3月から順次、各社が商用サービス開始とアナウンスされています。

 5Gの主な特徴は「高速大容量」「高信頼・低遅延」「多数同時接続」の3つで、現在広く使われている「4G」に比べて大幅に性能が向上すると言われています。ただし実は、この3つの主な特徴のうち、現段階で使えるのは「高速大容量」のみ。さらに基地局の整備が終わった限られたエリアでのサービス開始になります。

 「高信頼・低遅延」「多数同時接続」の2点についてはまだ、移動通信システムの標準化団体である「3GPP」が、その仕様や要求条件をまとめ、国際標準化を進めている段階です。実用化は早くても2022年以降になるでしょう。

3つの主な特徴を、もう少し具体的に説明してください。

柏尾氏:先行して実用化されるのは「高速大容量」ですが、当初の5Gの仕様上の最大速度は上りが10Gビット/秒、下りが20Gビット/秒です。工場など製造業界にとっては高精細な映像を扱えるようになる点で有効でしょう。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)の活用が現実的になるからです。

 ただし、工場など製造業界にとって重要なのは、その後に実用化される「高信頼・低遅延」と「多数同時接続」の方です。伝送成功確率が99.999%で無線区間の遅延時間が1m秒になるとされる「高信頼・低遅延」が実現すれば、従来のWi-Fiの「通信が遅れたり、途切れたりする」という欠点が解消されます。ロボットの遠隔作業や生産ラインの非常停止などを確実に実行できるようになるわけです。

 極端な例ですが、ロボットアームがそばにいる作業員にぶつかりそうになった時、その動きを止める操作をしても通信が遅延したり、途切れたりすれば作業員を危険にさらす事態になります。生産ラインのベルトコンベヤーを非常停止したい時も同じです。わずかな遅れが大きな事故につながりかねません。Wi-Fiではこの点に不安があったからこそ、工場の無線化を十分に進められなかったのです。

 この「高信頼・低遅延」と、理論上は1km四方当たりで100万台のデバイスと同時に通信できるようになるという「多数同時接続」が実現すれば、生産現場では多数のロボットを無線で滞ることなく制御でき、大量のセンサーから確実にデータを無線で送信できるようになります。なかなか実現できなかった「工場の無線化」が現実になるわけです。