電動化と並んで自動車産業を揺るがす自動運転化の波。日進月歩の技術の発展に支えられ実用化が目前に迫る。課題は何か、日本の自動車産業はどんな対応を迫られるのか。自動運転車の公道走行実験を実施し、「日経クロステックラーニング」で「見えてきた自律自動運転の実用化」の講座を持つ金沢大学 新学術創成研究機構教授の菅沼直樹氏に聞いた。(聞き手は高市清治)
自動運転車の公道での走行実験に取り組まれています。
菅沼氏:2015年からなので、足掛け6年になります。金沢市の中心市街地や東京の湾岸部、北海道網走市近辺などの公道で、完全自律型の自動運転車を走らせています。勤務する金沢大学の研究の一環です。緊急時に対応できる運転手はいますが、原則としてハンドルやブレーキ操作などをしない完全自律型の自動運転で公道を走行します。実験とはいえ一般のクルマと同様に法定速度内で走っています。自動運転の世界で言う「レベル3」(条件付き運転自動化)に当たります。
日本でもレベル3の自動運転車が発売へ
自動運転にもいろいろなレベルがあるのですね。
菅沼氏:まず、自動運転の定義から説明しましょう。自動運転には大きく「インフラ依存型」と「自律型」があります。
インフラ依存型は自動車単体ではなく、道路に設けられた設備と協調して自動運転を実現するタイプです。例えば、道路に埋め込まれた磁石や電線から発せられる磁界をクルマの磁気センサーが読み取り、それをガイドにして自動運転を実現します。
これに対して、車載システムだけで周辺情報を収集し、分析・判断して自動走行するのが「自律型」です。今、自動走行というと一般の人がイメージするのはこの自律型でしょう。後述しますが「ダイナミックマップ」など、面的な地図情報さえあれば、インフラが整備されていない場所でも走れます。インフラ依存型よりも走行場所の制約が少ないのがメリットです。