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営業や商品企画の担当者も巻き込む

モジュール設計を成功させるポイントは何でしょうか。

高野氏:設計者だけで設計しないことです。日本では設計者に設計を丸投げするケースが多いのですが、前述のようにモジュール設計は顧客や市場のニーズに応えるという目的があります。そのための戦略が必要なのです。ですから営業や商品企画の担当者も交えて検討しなければ、ニーズに応えられない的外れなモジュール化になりかねません。

 まず市場ニーズありき。最初に市場ニーズを把握して、どういう製品を投入すべきか、どんなラインアップを組み立てるか、その上でどの部分をモジュール化するかという戦略が必要なのです。

営業や商品企画の担当者などを交えて、どのようにモジュール設計を進めるのですか。

高野氏:当社の手法で簡単に説明しましょう。例えば、扇風機の例を考えてみます。まずは扇風機という製品に求められる要求を整理します。「基本性能」や「利便性」「操作性」「安全性」といった要素を抽出します。

 さらに基本性能なら「部屋全体に風を送れる」「風量を変えられる」「音が静か」といった要素に分解した上で、これらの要求を「市場がどの程度、重要視するか」「市場ごとに要求に違いはあるか」「将来、変化するか」といった視点で評価します。

 次に扇風機の構成要素を整理し、「送風ファン」「ファンモーター」「電源部」「リモコン」といった部品やユニットを洗い出します。

 その上で要求要素の評価結果を、整理した部品・ユニットに割り付けて、どのようにモジュール化するかという「モジュール化方針」を作成します。モーターカバーや台座のようにニーズが変化しにくい部品は共通化し、送風ファンやファンモーターのようにニーズや技術の変化が早い部品はその都度設計するといったルールを決めるのです。

 そして技術とコストの側面から、モジュール化できるか検討します。作成したモジュールを組み合わせた際に目標コスト内に収まるのか、モジュールを組み合わせたときに製品として成立するのか、インターフェースを共通にできるのか、といった課題をシミュレーションします。例えば、モジュールを組み合わせたら倒れやすくなるようでは、製品として成立しません。ワイヤハーネスの配線が困難になって製造しにくくなるといったケースもあり得ます。

 モジュール化の方針が固まったら、どのように製造するのか、どのようにメンテナンスするのかといった課題を、製造部門を交えて練る必要も出てきます。

営業や製造部門の担当者を交えて進めるメリットもありそうですね。

高野氏:その通りです。例えば、営業担当者がスピーディーに見積もりできるようになります。どのようなモジュールをどのように組み合わせられるか、どの程度の設計変更が可能かを、いちいち製造現場に問い合わせなくてもある程度想定できるようになります。受注機会を損失するリスクも軽減できます。製造側の要望を反映して金型や治具、ラインの共通化や標準化も図れます。

顧客や市場だけでなく、製造する企業内のニーズにも応えられるのですね。

高野氏:そうです。最近、時々見かけるのですが、モジュール設計が目的化し、市場ニーズや製造、保守を無視してモジュール設計してしまっている事例を見かけます。モジュール設計のためのモジュール設計ではない。設計・製造を合理化しながら、市場ニーズに応えられるようにする。モジュール設計にはこの姿勢が重要です。

高野 昌也(たかの・まさや)
大手電機メーカーの情報システム部門を経て現職。前職でのプロセス改革・定着活動の経験を生かすべくITID(東京・港)でコンサルティングに従事。制御の見える化、プロセス開発・改善・定着、認証取得支援、モジュール化など多数の製品開発のコンサルティングに携わっている。 現在は生産やサービスも含めたモジュール最適化実現などの案件を推進するかたわら、講演やオープンセミナーなどの講師としても広く活躍している。