全3022文字
PR

世界ナンバーワンの「ダントツ」製品を目指すべきだ─。ワールドテック代表取締役で、「日経クロステック ラーニング」の「世界No.1製品をつくる 先行開発段階に必要な設計力養成講座」の講師の寺倉 修氏はこう訴える。「ダントツの製品」を実現するための開発・設計プロセスはどうあるべきなのか。同氏に聞いた。(聞き手は高市清治、小林由美=ライター)

寺倉 修 氏
寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役
[画像のクリックで拡大表示]

本来あるべき製品設計の流れを教えてください。

寺倉氏:前半に当たる「先行開発」と、後半に当たる「量産設計」という、大きく2つの流れがあります。先行開発は、「どういう製品を開発するかを見定め、その製品が持つ技術課題を解決するめどをつける」プロセスです。量産設計とは、「先行開発した製品を、お客様に渡せるレベルに仕上げる」プロセスです。

 言うまでもなく、製造業で勝ち残るには、「優位性を確保する(競合他社に勝っている)」と「顧客からの信頼を得る(顧客に満足してもらえる製品を造る)」という2つの取り組みが必要です。この優位性と信頼は技術環境がいかに変わろうと、忘れてはいけない普遍的な取り組みです。前者を担うのが先行開発、後者を担うのが量産設計です。

先行開発では何が重要でしょうか。

寺倉氏:何よりもまず、これから開発する製品で「世界ナンバーワンを目指す」という姿勢です。忘れてはならないのが、開発する製品を選ぶ際の考え方と、ダントツ目標を定める根拠を重視すること。この2つが重要です。

「世界ナンバーワンを目指す」とは、どういう意味でしょうか。

寺倉氏:先述したように、先行開発で非常に大事なミッションは、「開発する製品の選択」であり、選ぶ考え方や根拠が大切です。製品を選んだらQCD(Quality:品質、Cost:費用、Delivery:納期)のうち、どれか1つでもいいから「ダントツにする」、つまり「他者を圧倒する」目標値を考えます。これが先行開発で「世界ナンバーワンを目指す」ということです。

 Q(品質)にはいろいろなQが考えられます。製品を構成する機能や性能、美しさ、形状などさまざまな質の高さです。先行開発ではその質の高さにめどをつけます。ちなみに量産設計では、質の高さを「達成」するのです。「壊れない」「不良を出さない」取り組みです。

なぜ、開発する製品を選ぶ際の考え方やダントツ目標を定める根拠を重視すべきなのでしょうか。

寺倉氏:製品を選ぶ際の考え方やダントツ目標を決める根拠を見誤ると、その後の修正が困難になり、取り返しがつかなくなるからです。先行開発の段階で誤りを見つけて修正しておけば、手戻りの手間もコストも最小限に抑えられます。しかし、量産設計や生産にまで進んだ段階で、選んだ製品が間違っていた、決めた目標値が妥当でなかったと気づいても手遅れです。既に多くの人手がかかり、生産体制も構築していますから、先行開発段階まで引き返して修正するのは不可能です。

 設計の川上である先行開発で、考え方や根拠、すなわち設計方針を練るプロセスに工数をたくさん割けば、結果的にトータルの設計期間もコストも抑えられます。仕事のスタート段階(フロント)に負荷(ロード)をかける、いわば「フロントローディング」です。最初に決めた方針は、その後の仕事全てに大きく影響しますから、工数を割いて精度を高めるべきなのです。