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菅沼直樹 氏
菅沼直樹 氏
金沢大学高度モビリティ研究所教授

自律型自動運転システムの技術開発が急ピッチで進められている。自律型自動運転実現に向けた最新の動向や、センサーと並んで重要な自動運転用地図の役割などについて、「日経クロステック ラーニング」で「自律型自動運転技術の動向と運転用地図」の講座を持つ金沢大学高度モビリティ研究所教授の菅沼直樹氏に聞いた。(聞き手=高市清治、安蔵靖志=IT・家電ジャーナリスト)

自動車の自動運転は現在どのような状況にあるのでしょうか。

菅沼氏:まず海外では、米カリフォルニア州やネバダ州でタクシーやバスなどのいわゆる「サービスカー」での自動運転が実現しつつあります。一般にイメージされる「目的地まで自動的に走行してくれる」「呼び出したら自分のところまで来てくれる」といった自動運転によるサービスが現実に近づいてきています。中国でも同様のサービスが始まっているとの報道も目にします。

 海外が「サービスカー」向けの「完全自律」の自動運転を中心に進めているのに対して、日本では基幹産業である自動車産業が販売する、いわゆる「オーナーカー」の自動運転を中心に、走行する範囲を限定した自動化を進めているのが現状です。

 最近は「移動物の追跡」や「パスプランニング」の技術が著しく進歩しています。移動物の追跡とは、自動車の環境を予測する技術だと思ってください。自動運転中の自動車の周囲には、動いている物体がたくさんあります。LiDARなどのセンサーでは、あくまでもセンサーが検知した瞬間に物体がどこにいるかしか分かりません。それを時系列で見続けると、それぞれの物体の動きを予測できるようになります。そして、その予測に基づいて動けるようになるのです。

 パスプランニングという技術は、その予測に基づいてどのように動くかを考える技術の総称です。つまり、移動物の追跡とパスプランニングとは切っても切れない関係にあります。