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 「人件費高騰を上回る生産性向上が必要」(オムロン上海董事・総経理の西山正人氏)。中国をはじめ東南アジアや新興国の人件費は年々上昇している。生産コストも上昇するが、そもそも製造業にとって作業者の採用自体も難しくなった。低賃金に存在意義を持つ工場は無くなりつつあり、日本国内に優るとも劣らない、自動化の努力が急ピッチで進む(図1)。

図1 新興国における最新スマート工場
図1 新興国における最新スマート工場
作業者の人件費が上昇する一方、QCD(品質・コスト・納期)に対する要求が厳しくなり、その解決策として低価格の自動化などの取り組みが進む。
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品質は高く、価格は安く

 そうは言っても、まだ低価格への期待は大きい。それでいて、製品の品質は競争力を維持する上で以前にもまして重要になった。しかし、採用する作業者の能力にはバラつきがあり、日本のように経験豊富で粒ぞろいというわけにはいかない。「工場勤務に不慣れなどころか、そもそも働いた経験がない人が少なくない」(ダイキン工業インド・ニムラナ工場)状況だ。

 これらをすべて両立してカバーするのが、自社での工夫による低価格の自動化だ。具体的な方法はいろいろだが、例えばオムロンの中国・上海工場は「多関節ロボットは高価だが、スカラーロボットなら費用対効果が十分得られる」という。UMCエレクトロニクス中国・東莞工場も多関節ロボットを使わず、必要な機能に絞った自動化装置を自ら設計、製作している。コニカミノルタマレーシア工場は、重要な工程用に「接着剤の液滴形状を安定して形成する自動機」を開発した。

 10年ほど前までは「多関節ロボットの方がゼロから自動化装置を造るより安い」と言うメーカーもあった。しかし今ではカメラを含むセンサー、アクチュエーター、プロセッサーやコントローラーや開発ツールが安価に手に入る。先進工場の生産技術者はその恩恵を十分に活用している。例えば上下に分かれる部品を組み立てる際に「上の部品を吸着して持ち上げる」「下から撮影して位置や向きを確認」「下の部品を所定位置に持ってきて撮影して確認」「確認結果から上下の位置を微調整しながら合わせる」といった一連の動作を容易に実現可能になった。

 それをさらに進化させた形態の1つがモジュール化ライン。装置の基本部分や枠組みを標準化し、これを互いに接続してラインを構築する仕組みだ。例えばダイキン工業インド・ニムラナ工場では「搬送モジュール」「検査モジュール」という2種類のモジュールの組み合わせだけでラインの各工程を構成。UMCエレクトロニクス東莞工場はプリント配線板の実装工程からモジュール化ラインの適用を始め、その後組み立てラインにも適用を広げた。

 先進技術の活用も進む。NECプラットフォームズタイ工場は、設備の稼働率や異常をIoT(Internet of Things)で把握・分析し、さらに日本と遠隔地間でVR(Virtual Reality)によるラインの設計・事前検証を始めた。