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PLCの制御周期で判断

 [1]は、自動機や専用機などm秒オーダーのリアルタイム制御のロジックにAIを組み込み、設備の処理性能や品質を向上させるもの。例えば、従来のPID制御を学習済みAI推論モデルに置き換えるといった使い方が想定できる。AIが設備の制御パラメーターを動的に調整し、精度や処理速度を改善できれば、生産性や歩留まりが高まる。

 ただし、高速な応答が求められる組み込み系の場合、計算処理に時間のかかる大きな推論モデルが使えない、搭載するPLCなどのエッジデバイスのメモリー容量に制約されるといった課題があった。しかし、こうした課題に対応する技術が登場している。機械制御向けのAI技術を開発するエイシング(本社東京)の「Deep Binary Tree(DBT、深層二分木)」がその1つだ(図2)。

図2 DBTの学習イメージ
図2 DBTの学習イメージ
最初は1ノードだけだが、学習が進むと2つに分岐する木構造が分岐・深化して応答関数の精度が高まる。どこまで深くするかは必要な精度やメモリーの制約に応じて調整する。(エイシングの資料を基に日経ものづくりが作成)
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 DBTはデータ探索などで用いられる木構造の「二分木」と呼ぶ手法を基にした機械学習の1種。少ないメモリーで高速に動作する上、深層学習のようにバッチで学習データを投入するのではなく、使いながらオンラインで追加学習できるといった特徴がある。学習を進めると二分木が分岐・深層化して入力データに対する応答精度が高まる。「省メモリーでリアルタイムに作動し、他の深層学習アルゴリズムと同等の精度が得られる」(同社代表取締役社長CEOの出澤純一氏)*2

*2 アルゴリズム主要部のプログラムは40Kバイト程度しかなく、マイコンでもμ秒オーダーで作動するという。DBTには、入力条件と出力の相関が分かるという利点もある。どういう条件で二分木のどのノードが反応したのかが分かり、後で因果関係を分析できる。

 この技術に着目したオムロンは、エイシングと提携し、DBTを基にしたAIエンジンを自社のコントローラー(PLC)に搭載してFA機器制御での活用を目指す。現在既に、フィルムなどを巻き取る巻き線機を題材に、DBTエンジンを搭載したPLCでフィルムの蛇行を抑制する技術検証を実施。従来のPID制御に比べて蛇行を1/10に低減する効果が得られている(Part2 技術動向 オムロン参照)。