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2019年7月11日、小惑星「リュウグウ」への2回目のタッチダウン(着陸)を成功させた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」。世界初となる小惑星へのタッチダウンに至るまでの道のりは平たんではなかった。今回は、タッチダウン本番に挑むに当たって直面した試練を振り返る。

 「一度、はやぶさ2プロジェクトは立ち止まろうと思います」─。2018年10月11日、記者会見に登場した宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所(ISAS)「はやぶさ2」プロジェクトチームプロジェクトマネージャの津田雄一氏はこう切り出した(図1)。

図1 「はやぶさ2」プロジェクトチームプロジェクトマネージャの津田雄一氏
図1 「はやぶさ2」プロジェクトチームプロジェクトマネージャの津田雄一氏
2019年4月18日に撮影。(写真:日経 xTECH)
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 JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」のミッションは、本連載第1回(2019年10月号)で紹介したように、生命誕生のカギを握る水や有機物の存在が期待されるC型小惑星「リュウグウ」から、その“かけら"(物質)を持ち帰ること。できることなら、そのかけらを複数地点から、さらには小惑星内部の物質も含めて採取することを使命とする。

 このため当初の計画では、2018年10月後半に1回目のタッチダウン(着陸)を行い、それを含めて2019年5月ごろまでに最大3回のタッチダウンを実施する構想を描いていた。しかし、リュウグウ表面の状況がよく分かってきたことで、その計画をそのまま推し進めるのはリスクが高く、計画の見直しが必要だと分かってきたのだ。

着陸できる平地が見つからない

 見直しが必要になった最大の要因はリュウグウの地形にある。実は、はやぶさ2プロジェクトでは、もともと100m四方にわたって平たんな領域を探し、その中心部を目標地点として1回目と2回目のタッチダウンを実施する計画だった。当時、想定していたはやぶさ2の着陸精度*1は「50m」(津田氏)。その精度を考慮すると、はやぶさ2を岩石にぶつけずに安全にタッチダウンさせるためには、その目標地点の周囲50mが平たんでなくてはならなかった。

*1 ここで言う着陸精度は、タッチダウンの目標地点から実際のタッチダウン地点までの最大誤差のこと。

 同チームは、リュウグウ表面にできるだけ接近して観測したり、投下したローバーで撮影した画像を使ったりして、約50cm以上の岩石の大きさと分布を分析し、タッチダウンできる場所がないか解析を続けてきた。だが、そうした場所を依然として見つけられずにいた。

 逆に、調べれば調べるほど疑う余地がなくなっていったのが、リュウグウがいかにタッチダウンの困難な小惑星であるかということだ。実際、津田氏は記者説明会でリュウグウについてこう語っている。

 「小惑星の全域にわたってどこもかしこも凸凹している。(中略)近づいてみれば、意外に(表面は凸凹が少なく)すべすべしていたとなる(かもしれないという)期待もあったのですが、やはりそう簡単ではなかった。凸凹度は厳しいということが判明しました」(図2)。

図2 リュウグウ表面の写真
図2 リュウグウ表面の写真
はやぶさ2が分離した小型着陸機「MINERVA-II1」が搭載していた探査ローバー「Rover-1A」が撮影した。(出所:JAXA)
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 記者から計画変更に対する率直な気持ちを聞かれると、「全く新しい世界を探査するので、何もかもが計画通りに行くとは思っていません。それなので、いよいよリュウグウが牙をむいてきたな、と思っています」と内に秘めた闘志をのぞかせた。