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小惑星「リュウグウ」へのタッチダウンに向けて入念なリハーサルを繰り返し、その結果を踏まえた改良により着陸精度を向上させた「はやぶさ2」のプロジェクトチーム。目標地点を定め、いよいよ1回目のタッチダウンを決行する2019年2月21日(日本時間)を迎えた。しかし、新たな試練がチームを待ち構えていた。

 はやぶさ2チームは、1回目のタッチダウンに当たり、探査機本体を高度20kmのホームポジション(HP)から、速度0.4m/sでまず高度5kmまで降下させ、次いで0.1m/sに減速して高度45mを目指す計画を立てていた(図1、2)。

図1 1回目のタッチダウン運用開始に先立って実施されたシフト交代ブリーフィングの様子
図1 1回目のタッチダウン運用開始に先立って実施されたシフト交代ブリーフィングの様子
2019年2月21日の午前6時30分ごろのJAXA宇宙科学研究所(ISAS)に設けられた管制室内での模様。探査機を降下開始させる運用担当者が集合し、シフト交代のブリーフィングを行っている。(出所:ISAS/JAXA)
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図2 1回目のタッチダウンに向けて当初予定していたシーケンス
図2 1回目のタッチダウンに向けて当初予定していたシーケンス
通信による遅延で、地上時刻は機上時刻から19分遅れが出る。(出所:JAXA)
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 想定外のトラブルが発生したのは、高度5kmを目指して降下を開始する約1時間半前の午前7時15分ごろ(日本時間、地上時刻)だった。「はやぶさ2」プロジェクトチームミッションマネージャの吉川真氏によると、「探査機の降下準備プログラムを動作させたところ、探査機が認識している位置情報が想定と異なっていた」(図3)。

図3 はやぶさ2プロジェクトチームミッションマネージャの吉川真氏
図3 はやぶさ2プロジェクトチームミッションマネージャの吉川真氏
2019年4月18日に撮影。(撮影:日経 xTECH)
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 幸い、はやぶさ2チームの懸命の原因究明により、理由はすぐに判明する。「探査機が認識している位置情報が、降下誘導プログラムの動作のタイミングの影響で異なったデータになってしまっていた」(同氏)のだ。調査の結果、非常に特殊な事象で発生する、これまでは発生していなかった不具合であると分かった。同チームは、その不具合を解消するべくプログラムの修正に着手。だが、困ったことにその修正はなかなか終わらなかった。