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 滋賀大学データサイエンス学部とダイハツ工業は2019年5月から7月にかけて、「滋賀大学TNPグランプリ」と名付けたコラボ授業を開催した*1。実車を走行させてデータを取得・分析して最も燃費が良い走り方を導き出し、本番走行での燃費を競い合うというチーム対抗戦だ。

*1 TNPは「低燃費」の意味。

無機質でないデータを学生に体感させる

 「ダイハツとのコラボレーション授業は、データサイエンス学部の学生に『ものに関心を持ってもらいたい』という思いを(教える側の)私が強く持ったことに端を発している」。滋賀大学データサイエンス学部教授の河本薫氏は、同大学とダイハツのコラボ授業を始めたいきさつをそう語る(別掲記事参照)。

 河本氏は元・大阪ガス情報通信部ビジネスアナリシスセンター所長で、日本を代表するデータサイエンティストとして知られている。2017年に創設したばかりの滋賀大データサイエンス学部の教授に就任したのが2018年4月。当時は折しも、人工知能(AI)やIoTが世界的なブームになった時期だった。

 ただ、河本氏自身はAIやIoTの行き過ぎたブームに不安も感じていたという。「データをもらって分析するだけでは、無機質な数字の世界の勉強で終わってしまう可能性が高い。それではビジネスの世界で戦える思考力は身に付かない」(同氏)。

 特にIoTは、「ものに触れ、ものを感じ、ものを理解する必要がある。データ分析をする前に、ものに対する感性を磨いて初めて、分析力が生きてくる」(河本氏)。

 重視したのは、分析に必要なデータの収集に自らが関わること。これはデータサイエンティストの大切な役目である。同氏は、「データは誰かに与えられるものではない。自分で計測して集めるのが基本だ」と強調する。

 ところが、大学の教育現場ではビジネスにつながる実データを収集できる機会がほとんどない。そんな悩みを大阪ガス時代からの知り合いであるダイハツのパワートレーン制御開発部ユニット制御開発室の太古無限(たいこむげん)氏に打ち明けたところ、「ダイハツならクルマを使ったデータ計測に協力ができる」と提案された(図1*2。それがコラボ授業の発案に結びついた。

図1 「滋賀大学TNPグランプリ」を企画した河本薫氏(右)とダイハツ工業の太古無限氏(左)
図1 「滋賀大学TNPグランプリ」を企画した河本薫氏(右)とダイハツ工業の太古無限氏(左)
以前から、同じ関西企業に勤めるデータ分析者として交流している間柄だった。(写真:ダイハツ工業)
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*2 太古氏はダイハツで小型車用エンジンの制御開発を担当している。河本氏が大阪ガス時代に立ち上げた関西企業で働くデータ分析者が集まる会合の仲間だった。