異種材料接合(異材接合)のビジネスチャンスが大きく広がり始めた。ねじなどの締結要素を使わずに、異なる材料同士を強固にくっつける接合技術だ。日本が生んだこの技術は、今やデジタル機器などで汎用的に使われている。ここに来て、品質とコストの条件がより厳しい自動車で採用事例が出てきた。さらに、新規参入企業が次々と登場。新たなタイプの異材接合技術が続々と誕生している。ついにはドイツ企業も参入を始めた。本格的な実用化が始まった異材接合の最前線を追った。

特集
異材接合、市場にトライ
目次
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異種材料接合技術を接合手法、材料、用途で分類
金属とプラスチック、異種金属同士、異種プラスチック同士のさまざまな技術の開発が進み、市場への投入が始まっている。技術の進歩とともに、使い手企業の認知度も高まった。
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日本車採用でビッグビジネス号砲、技術改良と使いこなしが好循環
総論 ビッグビジネスへキックオフ
日本の自動車メーカーが量産車の吸気ダクトに採用(図1)─。機械的な締結要素を使わずに異なる材料を強固にくっつける異種材料接合(異材接合)技術が、実用化に向けて加速し始めた。
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マルチマテリアル設計の本命へ、重い鋼を置き換え軽量化狙う
新開発技術[1]軽量化
鋼をはじめとする重い金属で構成された部品や材料を、より軽い材料に置き換えて製品全体の質量の軽減を図る。そのために、異なる種類の材料同士を強固にくっつけたい─。軽量化は、ユーザーが異種材料接合に期待する最も大きなニーズだ。
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圧着のみで異種金属を直接接合、まさかの強度と導電性確保
新開発技術[2]異種金属
金属表面の酸化膜や汚れを除いて内部をむき出しにした新生面同士を接近させると、原子間の結合が生じる。この現象は以前から知られているが、最近になって接合技術として利用され始めた。
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接合と防水・気密を同時に実現、工数と部品点数を一挙に減らす
新開発技術[3]密着性
前パートで解説した通り、自動車の軽量化を進めるために鋼などの代替としてプラスチックを採用する動きが急だ。その中で異種材料接合技術に求められ始めた機能が密着性と、それによる気密性や防水性である。
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膨張収縮に追従し応力を吸収、金属にもプラにも化学的に結合
新開発技術[4]緩衝層
金属とプラスチックの接合技術は改良が続く。その1つが、温度変化による膨張・収縮の差や、弾性率の違いによる変形の差を吸収できる緩衝層だ。接合界面にかかる応力を分散できるので、局所的に少しずつ接合が壊れる事態が生じにくいのも長所だ。
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フラウンホーファーも参画、量産見越しシステムで提案
ドイツの新技術
自動車などでのマルチマテリアル化の実用は、日本よりも欧州の方が進んでいる。必然的に異種材料の接合技術の利用も進んでいたが、リベットのような機械的な締結が主流だ。